2017 Fiscal Year Research-status Report
タナゴ亜科魚類が獲得した新奇形質の適応的多様化機構
Project/Area Number |
16K07479
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
北村 淳一 三重大学, 生物資源学研究科, リサーチフェロー (00432360)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小北 智之 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 准教授 (60372835)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 適応進化 / 繁殖形質 / 魚類 / 宿主適応 / タナゴ亜科魚類 |
Outline of Annual Research Achievements |
繁殖戦略の一例である繁殖寄生を行う動物では,利用する宿主に対する適応進化によって,近縁種においてすら繁殖形質が多様化していることが珍しくない.コイ科に属するタナゴ亜科(Acheilognathinae)魚類は,イシガイ目の淡水二枚貝類に托卵するという特異な繁殖生態をもち,種によって利用する二枚貝の種類に偏りがあることが知られている.また,タナゴ類には他のコイ科魚類にはみられない顕著な繁殖形質(卵形質・産卵管形質)の多様化が認められ,これらは宿主依存的な適応進化の産物である可能性が示唆されている.しかし,その根拠となる知見は乏しいのが現状である.そこで平成29年度では,系統種間比較(phylogenetic comparative methods: PCM)を用いたアプローチにより系統関係と利用宿主を考慮して,タナゴ類の雌繁殖形質多様化の要因の探索とその動態についての検証を行った.ミヤコタナゴを除く日本産タナゴ亜科魚類のすべての種を対象に卵形の定量化を行うとともに,これらの種の分子系統関係を利用し統計的に解析したところ,本亜科魚類における宿主依存的な卵形質の進化が支持され,これまで示唆されていた仮説の検証に成功した.また,このような宿主依存的な卵形質の進化はタビラ(Acheilognathus tabira)5亜種の間でも認められ,これまで研究代表者らが予測してきたシナリオが統計的に支持された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で、仮説を支持する結果が既にいくつか得られているため。
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Strategy for Future Research Activity |
タナゴ亜科魚類における宿主適応と関連した産卵管長の多様化に関して、その遺伝基盤を比較トランスクリプトーム解析からアプローチする研究項目に関して、次世代シーケンスデータのデータ解析に重点をおいていく。
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Causes of Carryover |
当初予定していたDNA分析について、より適切な手法が新たに発見されたことから、それらの実施を慎重に検討する時間を今年度確保したことにより、分析を次年度に実施することにしたため。
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