2017 Fiscal Year Research-status Report
バチルス属菌由来の環状リポペプチドによるシロイヌナズナの病害抵抗性制御機構の解明
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16K07628
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
横田 健治 東京農業大学, 応用生物科学部, 准教授 (80349810)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
門田 有希 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (30646089)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Bacillus / 環状リポペプチド / 病害抵抗性 / シロイヌナズナ / iturin A / surfactin |
Outline of Annual Research Achievements |
Bacillus属細菌が生産する環状リポペプチドは、広範な微生物種に対する抗菌活性の他に、植物病害抑制において宿主植物の病害抵抗性誘導を誘引することが報告されている。しかし、環状リポペプチドの精製物を用いて病害抑制効果を評価した研究事例は極めて少ない。これまでに、タアサイを宿主植物として、精製した環状リポペプチドiturin A及びsurfactinについて、土壌へ混和することで、土壌糸状菌病害を抑制することを報告した。そして、両環状リポペプチドは過剰な濃度を処理すると、薬害ではなく、病害を抑制する効果が消失する奇異な減少を見出した。そこで、モデル植物であるシロイヌナズナを用いて、抵抗性誘導に依存した病害抑制効果、並びに過剰処理濃度における病害抑制効果の消失を評価することとした。アブラナ科黒斑細菌病菌を病原菌としたシロイヌナズナの葉面病害の実験系により、精製した環状リポペプチドを水耕栽培したシロイヌナズナの根部へ処理し、病害抑制効果を評価したところ、iturin Aでは0.5~2μMで、surfactinでは4~16μMの濃度範囲で有意な病害抑制効果が認められ、各々、4及び32μM以上の濃度では、病害抑制効果が消失し、タアサイを宿主とした土耕栽培と同様の現象が認められた。さらに、病害抵抗性誘導の関連遺伝子に関連するシロイヌナズナの欠損変異株を用いた解析から、本細菌病に対しては、イソコリスミ酸生合成経路によるサリチル酸をシグナル伝達物質としたSAR経路に依存して病害抑制効果を示し、そして、過剰処理による病害抑制効果の消失はISR経路の発現による拮抗作用が関与しないことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
葉面細菌病を対象とした、病害抵抗性誘導に依存した、環状リポペプチドの病害抑制効果については、iturin A及びsurfactinの両環状リポペプチドは病害抵抗性誘導に依存した病害抑制効果を示し、さらに両環状リポペプチドは共に過剰処理濃度において病害抑制効果を消失するという特徴を明らかにすることができた。両環状リポペプチドのシロイヌナズナに対する抵抗性誘導メカニズムを明らかにするため、NGS解析によるRNA seqを実施するため、顕著な病害抑制効果を示す処理濃度及び病害抑制効果が消失する処理濃度において、定量PCR法により既知の病害抵抗性誘導関連遺伝子の発現量解析を実施したが、再現性を確認することができなかった。また、今回の葉面細菌病は主にSAR経路の発現により病害抑制がなされるため、ISR経路に依存して病害抑制効果を評価することが可能となる実験系を確立し、評価することも必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、iturin A並びにsurfactinの環状リポペプチドについて、シロイヌナズナを宿主とした病害抵抗性誘導機構の解明を行う。環状リポペプチドを根部処理したシロイヌナズナの地上部を採取して、RNAを抽出後、逆転写反応、定量PCRにより病害抵抗性誘導関連遺伝子の発現量を解析する。他の抵抗性誘導物質の中には、宿主へ処理することで、その後の病原菌の感染に対して迅速に抵抗性を示すことができるプライミング効果を示すことが知られていることから、環状リポペプチドの病害抑制効果がプライミング効果に依存することも想定し、環状リポペプチド処理後に病原菌を接種し、接種後のシロイヌナズナの遺伝子発現解析も実施する予定である。 また、ISR経路に依存した病害抑制効果を評価するため、病原菌にネクトトロピックな葉面糸状菌病害を選抜して、実験系を確立し、評価を行う予定である。病原菌には灰色かび病菌を用いて、胞子懸濁液を作成し、葉面に滴下することで糸状菌病害を引き起こす。環状リポペプチドの処理は、葉面細菌病の評価と同様に、水耕栽培したシロイヌナズナの根部に精製物を水耕液に添加することで処理し、経日的に病害を評価する。
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Causes of Carryover |
予定していたNGS解析を翌年度へ繰り越したため
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