2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K07684
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
湯本 勲 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究部門付 (30358303)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 藍染め / 自然発酵 / 次世代シークエンサー解析 / 微生物叢 / インジゴ還元微生物 / 好アルカリ性微生物 / 嫌気性微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
藍染めの発酵液は自然発酵によって微生物叢が形成され、色素の還元は存在する微生物によって維持されている。外部からの微生物のコンタミのチャンスが多く存在するにもかかわらず、色素の還元状態が約6か月以上も維持されている。この還元維持機構をより良く理解することによって、染色強度の点でより望ましい微生物叢形成や維持管理が困難な状況を改善で来るものと考えられる。また類似した非滅菌系における調整や維持管理にも応用出来るものと考えられる。今回は自前で調整した長期間維持した発酵液と短期間しか維持できなかった発酵液の微生物叢の解析を行うことによって、微生物の変遷の違いおよび微生物叢悪化の要因を明らかにすることを目的とした検討を行った。 長期間維持した発酵液の安定期にはAnaerobrancaceaeが優勢をし占め、引き続きBacillaceaeが優勢を占めるフェーズが出現したが、その様なフェーズは短期間しか維持できなかった発酵液には認められなかった。これと類似した安定期における微生物叢の変遷は以前、北海道伊達市の工房から入手した長期間還元状態を維持した試料にも認められたことから、長期間還元状態を維持可能な一つのパターンと考えられた。また微生物叢の変化の速度は両発酵液において最初の一週間はそれ以降と比較して非常に速い変化を示した。また微生物の多様性の変化は、発酵の初期に低く次第に上昇していくことが理解できた。また悪化した微生物叢には共通して存在する微生物群が存在し、微生物槽の悪化には微生物叢の多様性の増大に加えある特定の微生物群の増加が原因であることが示唆された。今後微生物叢の多様性および微生物叢の悪化の原因となる微生物の増加を抑制する方法を勘案することで、より発酵液の長期間維持の方法を見つけることにつながることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の複数バッチの発酵液の解析により、発酵液安定期のデーターを蓄積するとともに、短期間で色素の還元が維持できなくなった系との比較が出来たことにより、発酵液の安定期の理解が深まったと考えている。また、これまでの藍染め発酵液の長期間のスパンにおける動態の変化の解析の試みにおいて、安定期のデーターは取得出来ていたが、初期変化の詳細のデーターはほとんど得られていなかったが、初期の詳細なデーターが得られたことにより、今後発酵の開始が遅くなる原因の解析に資することが出来ると考えられる。また、染まらなくなる直前のサンプルの入手が困難なことからこれまで、データーはほとんどなかったが、今回の検討によりある程度原因が特定できた。以上にの結果を踏まえ、発酵液の状況判断の指針が発酵初期、安定期、終末期別に改善処方を考えることが出来る様になってきたと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果を踏まえ、発酵管理が簡単で長期間維持可能な発酵法の開発を目標として、様々な内外の発酵液の微生物叢の動態解析を行い、データーを蓄積する。発酵液に存在している微生物がインジゴ還元微生物かどうかは、存在する微生物を分離しその還元能を確認するまで判断出来ないことから、さらなるインジゴ還元微生物の分離、同定を進めデーターベースの整備をさらに進める。また、より多くのインジゴ還元微生物を理解することは、微生物叢をより正確に解釈するためにも重要である。また発酵液の適切な維持管理のためには、タイムリーな発酵液のパラメーターの測定→状況判断→処方が必要であるが、そのより良い判断を目指して微生物叢解析および各種測定をして情報およびデータを蓄積する。
|
Causes of Carryover |
(理由)使用する予定の消耗品の中に、内部の予算で購入済みのものがあり、新たに購入する必要がないものがあった。 (使用計画)今年度は予定していたよりも多くに試料の解析を行い少しでもデーターの蓄積量を増やしたい。
|
Research Products
(3 results)