2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K07715
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
大場 裕一 中部大学, 応用生物学部, 准教授 (40332704)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 発光キノコ / ルシフェリン酸化物 / 発光反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
発光キノコの発光メカニズム解明を目指し、当初の予定どおりルシフェリン酸化物の特定を試みた。2015年に、ロシアとの共同研究により発光キノコのルシフェリン前駆物質がヒスピジンであることを特定している(Purtov et al., 2015)ので、本年度は、市販のヒスピジンとヤコウタケ(Mycena chlorophos)の粗抽出物(ルシフェラーゼ画分)を混合し、補因子であるNADPHを加えて反応を行った。その結果、反応時間とともに未知化合物の蓄積が見られ、さらにこの未知化合物が徐々に減少していくとともにクマル酸の蓄積が認められた。これは、この未知化合物がルシフェリン酸化物であり、これが分解することでクマル酸が生じたことを示唆する結果である。 そこで次に、この未知化合物をHPLCを用いて分離し、マススペクトルにより分子量を推定した。以前から共同研究を行っているロシア科学アカデミーでもNMRを使ったこの未知化合物の特定を進め、概ね構造がわかってきた。さらに、ブラジル・サンパウロ大学と共同研究により、安定同位体標識酸素を用いたルシフェリンの酸化プロセスの解明を進めた。その結果、発光キノコのルシフェリン酸化プロセスが、これまでに知られている生物発光とは異なる中間体を経ている可能性が示唆された。 以上の成果は、これまで謎であった発光キノコの発光メカニズム解明の重要な手掛かりなるものであり、来年度中にはルシフェリン酸化物の構造決定および酸化プロセスの解明できる可能性が強くなってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であったルシフェリン酸化物の構造決定が進んでいる。とくに、ルシフェリン酸化物の分解物がクマル酸であることや、ルシフェリン酸化物と思われる未知物質の分子量は部分構造を明らかにするっことができたことは、重要な進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
共同研究機関であるロシア科学アカデミーとサンパウロ大学は、どちらも我々とは異なる発光キノコを材料に研究を行っているが、得られてきたルシフェリン酸化物と反応プロセスに関する情報は、発光キノコの発光メカニズムは種を越えて共通であることを示唆している。したがって、それぞれの機関の強みを総合して解析を進めることで、発光キノコすべてに共通するルシフェリン酸化物の化学構造と反応プロセスを解明できるものと考えている。
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Research Products
(6 results)