2016 Fiscal Year Research-status Report
天然物構造多様性の拡充に向けた未研究微生物種における二次代謝能の解明
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16K07719
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
五十嵐 康弘 富山県立大学, 工学部, 教授 (20285159)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 二次代謝 / 微生物 / 新規化合物 / 構造決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
創薬スクリーニングにおいては、化合物ライブラリーの構造多様性・新規性は最も重要な因子である。従来利用されてきた化合物群とは構造タイプを異にする新規化合物を取得し、創薬研究へ役立てることを目的として、希少微生物群からの新規物質探索を進めている。 希少好熱性細菌Ktedonobacteria類は発見が新しく、その生産物の研究はほとんどなされていない。そこでその一種である Thermosporothrix hazakensisの代謝生産物を精査し、新規化合物ktedonobisetherを発見した。本化合物は対称二量体構造を有し、神経細胞のオートファジー誘導活性を示す。本化合物の二重結合の幾何異性を決定するため、可能な立体異性体二種に対応するモデル化合物のうち、一方の化合物を合成し、天然物との比較を行ったが1H-13Cカップリング定数は一致せず、立体配座を断定するには至っていない。 二種類のa-ピロン化合物monascuspyrone(既知化合物)とrobillapyrone(新規化合物)はいずれも希少糸状菌Pseudorobillardaの生産物として発見された。いずれも側鎖に三級水酸基の不斉中心を有するがその絶対配置は未決定であった。そこで当初計画した分解反応による誘導体化を試みたが、期待通りに反応が進行しなかったため、CD計算による解析を検討した。その結果、いずれの化合物も絶対配置は、Rと決定することができた。 もう一つの好熱性細菌Laceyellaが生産するポリエン様の化合物は、安定に、多量に生産されるにも関わらず、シリカゲルカラム、逆相カラム、LH20ゲルろ過等種々の精製条件を検討したが、分解のため、安定に取り出すことに現時点で成功していない。pH、光、温度等の物理条件の影響も精査したが、明確な分解の原因特定に至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
糸状菌Pseudorobillardaの生産物については、予定通りの結果を得ることができたが、好熱細菌Laceyellaについては純粋に目的化合物を得ることに成功しておらず、未だ構造解析に取り組める状況ではなく、当初の計画から遅れている。一方で、希少好熱性細菌Thermosporothrix hazakensisの生産するktedonobisetherに関しては、片方のモデル化合物のみでは立体構造の確定に至らず、もう片方のモデル化合物が必要となり、当初の予定から若干の遅れが出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
希少好熱性細菌Thermosporothrix hazakensisの生産するktedonobistherについては、片方のモデル化合物のみでの比較では立体構造の決定には至らず、もう片方のモデル化合物合成を進めている。二種類のモデル化合物とのNMRデータの比較により、立体構造を確定できると予想している。また、本菌株が生産するいくつかの未知化合物が単離されており、それらの構造解析をNMR解析を中心に進める。 Pseudorobillardaの生産するピロン化合物二種類については、絶対配置決定に成功したことから、今後は論文に成果をまとめて発表する。また未研究糸状菌3株を培養し、目的とする未知成分の単離、構造解析を行う。 好熱性細菌Laceyellaが生産するポリエン様の化合物は、その共役不飽和結合部分が分解の原因と考えられる。そこでまずは構造の確定を目的として、生産されたポリエンを誘導体化することにより、安定な単離を試みる。具体的には、ポリエンの不飽和結合を接触水素還元により飽和させることで、不安定性を解消できる可能性がある。しかし最終的には天然物そのものを得る必要があるため、物理条件含めて、単離の方法を引き続き検証する。
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Causes of Carryover |
好熱細菌Laceyellaの生産するポリエン様化合物の単離に時間を要したために、その先の構造解析に関わる実験を実施できず残額が生じた。また、希少糸状菌の研究を担当する大学院生が10月から翌年3月まで体調不良のため休学したため、Pseudorobillarda以外の糸状菌の培養、単離精製実験を全く進めることができず、残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ポリエン様化合物の構造解析に際しては、生合成前駆体(マロニルCoAを基質として利用する経路と予測)を取り込ませて、炭素を13C標識することにより、精製不完全な混合物での構造決定が可能であろうと予測している。そのため、13C標識酢酸を購入する(15万円)。 糸状菌3種の培養を計画しており、それらの培養、単離精製に関わる試薬、消耗品を購入する(14万円)。
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