2016 Fiscal Year Research-status Report
イソフラボン腸内細菌代謝物エコール抱合体は消化管に作用し雌ラットの食欲を抑制する
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16K07738
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
岸田 太郎 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (80304658)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 大豆イソフラボン / 飼料摂取量 / ラット / 食欲 / 視床下部 |
Outline of Annual Research Achievements |
先に我々は大豆イソフラボン・ダイゼインを雌ラットに与えるとその腸内細菌代謝物エコールにより、飼料摂取量が低下することを見出した。この際胆汁中に多量の抱合型エコールが分泌され、小腸の食欲制御因子の変更が観察された。申請の研究は、胆汁中に分泌、即ち腸管循環しているエコールの抱合タイプを特定し、特定の抱合型エコールが小腸で作用し飼料摂取量低下へ関与しているか、無麻酔・無拘束下で十二指腸カテーテルより各種抱合型エコールを注入する系で検証し、さらに作用が認められた抱合体について小腸で合成分泌される消化管ホルモンへの影響を調べることにより、大豆イソフラボンの腸内細菌代謝物エコールの抱合体が、腸肝循環しながら消化管を介して食欲を抑制する機構を解明することを目指す。本年度の計画通りグルクロン酸または硫酸抱合体由来のフラグメントの特異的イオンクロマトグラフでエコール抱合体同定・定量法を確認し、精度、検出限界を定めた。さらに飼料摂取量低下効果が認められた雌ラットではエコールは主に硫酸抱合体として存在し、グルクロン酸抱合体も少量ながら存在することも確認した。今後これら抱合体を分取し、ラットに投与し作用機構への寄与を確認する。 当初計画になかったが新たにダイゼインが胃内容排出を遅延することが作用機構に関わる可能性も見出した。卵巣摘出ラットを飼料の摂取を暗期の3から6時間のみ可能とした制限食に馴化させダイゼインを混餌投与し、胃排出速度を測定したところ、4時間制限食において、飼料摂取量が有意に減少した際の胃内容排出が有意に遅延し、6時間制限食でも遅延傾向を示した。絶食再給餌後1時間の飼料摂取量では全条件C群とD群の間に差がなく、ダイゼインの摂取は、空腹時の飼料摂取には影響しないと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画通り、ダイゼイン摂取時、飼料摂取量が低下している際の胆汁中エコールについて、抱合体の種類を明らかにした。引き続きこの抱合体を分取精製し、十二指腸内に投与した際の飼料摂取量の短期応答、関わる小腸粘膜、視床下部および血中の食欲関連因子のプロファイリングを行う予定である。 当初の計画にはなかったが、ダイゼインが胃内容物の排泄を遅延することにより食欲を低下させている可能性が見いだされた。作用機構を解明する上で非常に重要な知見であり、今後の計画にさらなる検証を盛り込む。 以上の様に当初計画については順調に遂行できており、さらに計画外の新しい知見も見出しているため当初の計画以上に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの計画については大きな変更はなく、このまま当初計画通り推進していく。 新たに見出された胃内容物排出速度の遅延については、制限食を採用しているが、この飼育方法をさらに最適化する計画を盛り込む。候補としては2食制と時間制限食の組み合わせ、即ち例えば3時間の自由摂取の後4時間のインターバルをはさんで30分間の自由摂取をする食事パターンなどをいくつか候補を立案して検証する。また、今回の測定は医の残存内容物重量を指標にしているが、マーカーなどの適応も検討したい。
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Research Products
(3 results)