2017 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子改変マウスを用いた男性ホルモンと食餌性肥満・糖尿病のクロストークの解明
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16K07743
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
原田 直樹 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (00529141)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 腸内細菌叢 / D-乳酸 / 肥満 / 耐糖能異常 / アンドロゲン受容体 / 性差 / 高脂肪食 / 脂肪細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
Cre-loxPシステムを用いて全身性アンドロゲン受容体(AR)ノックアウト(KO)マウスを作出し、代謝疾患発症におけるARの役割について検討を行っている。昨年度、AR-KO雄性マウスが、高脂肪食摂取時に肥満、耐糖能異常、インスリン作用不全を呈することを明らかにした。本年度は、AR-KOマウスにおける代謝疾患発症において、性差と食餌組成の影響について検討を行った。その結果、AR-KOによる肥満、耐糖能異常、インスリン作用不全については、雄性マウスが高脂肪食摂取時にのみ生じることが明らかになった。つまり、代謝疾患発症に食餌と内分泌系のクロストーク、さらに性差が存在すると考えられる。 肥満などの代謝疾患を発症したAR-KOマウスの腸内細菌叢において乳酸産生菌の増加が観察されたため、培養細胞系(3T3-L1細胞)を用いて脂肪細胞分化における乳酸の影響について検討した。マウスやヒト体内では通常、産生される乳酸は99%以上がL体であり、D-体はわずかである。しかし、腸内細菌ではL-乳酸に加えてD-乳酸も産生され、体内に流入しうるため、これらの鏡像異性体における相違についても検討を行った。その結果、L体、D体ともに脂肪細胞分化を促進させたが、D-乳酸はL-乳酸よりも強力に脂肪細胞分化を促進させた。D-乳酸はエネルギー源というよりも寧ろシグナル分子として機能することで脂肪細胞分化を亢進させることが示唆された。これらの結果から、AR-KOマウスの腸内において増加した乳酸産生菌が、腹部内臓脂肪の増加に関連するというメカニズムが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AR-KOマウスにおける代謝疾患発症における性差、食餌の影響について明らかにすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
腸内細菌移植や抗生物質投与によって、高脂肪食を摂取させた雄性AR-KOマウスにおける代謝疾患発症に腸内細菌叢の変化が関与するか否かを検討する。また、盲腸内において乳酸の増加の有無について検証する。
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Causes of Carryover |
腸内細菌移植の実験で上手く定着が見られず、想定していた解析を取りやめた。このために解析用の試薬代の一部をH30年度に先送りして、抗生物質投与実験の際に用いることとした。
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