2017 Fiscal Year Research-status Report
森林の地上部-地下部のつながりが維持する樹上食物網およびその生態系機能の解明
Project/Area Number |
16K07775
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
吉田 智弘 東京農工大学, 農学部, 講師 (60521052)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩井 紀子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50630638)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 節足動物 / 土壌動物 / 林冠 / 枯死有機物 / 着生植物 / 樹洞 / 林床 |
Outline of Annual Research Achievements |
森林生態系における地上部(林冠・樹幹)と地下部(林床)のサブシステム(食物網)のつながりを明らかにするために、地上部に形成されている腐食連鎖系生物の棲みか(樹洞、着生植物)およびそれら動物群集の構造に着目して研究を進めてきた。平成29年度には以下の項目について調査を実施し、成果を発表した。 1.亜熱帯淡水湿地林における着生植物の空間分布調査の結果、土壌動物の棲みかとなるシマオオタニワタリ(リュウキュウトリノスシダ)は、同程度のサイズの個体が集中分布していたことが明らかになった。しかしながら、1本の樹木幹には複数個体着生することが少なく、着生部位や樹幹流の養分などの競合があることが示唆された。 2.樹洞に生息する土壌動物に対する樹洞サイズおよびリター量の効果を検証した野外操作実験の成果を公表した。本実験では、リター量およびリター密度(樹洞容量あたりのリター量)が樹洞の土壌動物の群集構造に対して潜在的に重要な因子であるが、自然条件下の樹洞ではそれらの効果は他の要因(リターの質、履歴等)によって隠されていることが示された。 3.樹洞における腐食性水生生物群集の群集構造に対する環境因子の効果を検証した野外操作実験の成果を公表した。本実験から、樹洞の水溜まりにおける動物種数は直接効果(水堆積量、リター量など)によって説明されたのに対して、動物個体数は間接効果(樹洞の垂直位置や樹洞周囲の環境)によって説明された。本実験から、樹洞の水生動物が樹洞の単純な物理的・化学的特性(直接効果)によってのみ影響を受けているのではなく、樹洞の周囲の他の状態(間接効果)によっても影響を受けているが、その反応パターンは種間で大きく異なることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題において調査対象となる樹洞の動物群集についての成果は調査を終え、論文として公表することができ、順調に進展している。一方、もうひとつの調査対象である着生植物上の動物群集については、サンプル処理およびデータ処理が計画よりは少し遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の3点について実施していく。 1.次年度が最終年度となるため、すでに得ているサンプルおよびデータの処理をおこない、論文の作成を進める。具体的には、腐食者(ハエ、トビムシ)の垂直分散のデータおよび樹上の重要な捕食者であるクモのデータを論文としてまとめ、学術誌に投稿する。 2.着生植物上のリターの重要な分解者である大型土壌動物(ワラジムシ、ゴキブリ等)に着目し、着生植物上のリター分解過程を追跡する野外操作実験を実施する。 3.樹洞を利用するカエル(アイフィンガーガエル)の生態を、追跡調査および野外操作実験(人工樹洞の設置)によって明らかにする。本種による樹洞利用が樹洞に生息する他の水生生物群集にどのような影響を及ぼすかを検証する。
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