2017 Fiscal Year Research-status Report
自然撹乱後の下層植生が森林のCO2収支に与える影響の解明
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16K07789
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
溝口 康子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員等 (90353870)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 下層植生 / 撹乱 / 光合成有効放射量 / フラックス / GPP / Re |
Outline of Annual Research Achievements |
撹乱後の森林のCO2収支の変化を明らかにするため森林上・下層2高度においてフラックス観測を行い、森林下層のCO2収支への寄与の変化を把握した。 台風撹乱直後の2007年及び2008年の1年間の値は下層植生の総一次生産量(GPP)は、5.8および5.4MgCha-1yr-1で、森林キャノピー上層で測定した森林全体の値の5割弱、樹木の光合成によるCO2吸収が多い夏期の6~8月では4割弱だった。下層の観測データから求めた生態系呼吸量(Re)は、7.9および7.3MgCha-1yr-1で森林全体の値の5割前後、無積雪期間の4~11月では6割強を占めた。森林全体の光利用効率(=GPP/光合成有効放射量)は、撹乱後低下した。撹乱後の下層の光利用効率は、森林全体と同等か全体の値を上回る時期があった。これらの結果から、撹乱直後のササを中心とする下層植生のCO2収支への寄与率は大きかったことが明らかになった。 夏期の光合成有効放射量とGPP、無積雪期の気温とReの関係式から、2015および2016年の下層のGPPとReを推定したところ、下層の寄与率はGPPで約3割、Reは6割弱と台風撹乱直後より低下した。GPPは樹木の成長に伴い下層の光環境が変化したため、Reも樹木の成長に伴って森林全体のReが増加したためと考えられた。一方、2016年から開始した下層フラックス観測データのGPPおよびReは、ともに下層の寄与率が2007-2008年と比較して大幅に低下していた。測定データのNEEの値が小さく、また、下層植生の変化があまり見られないこと、森林全体のReが撹乱後高いまま維持していることなどから、観測データは過小評価していることが示唆された。 毎木調査および同じ試験地内で行われた分解率推定等のデータから、微生物分解によるCO2放出量は高いまま維持されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フラックス観測及び気象観測、毎木調査は予定通り実行し、下層植生の森林全体のCO2収支への寄与、森林構造の変化を得ることができた。ただし、下層のフラックス観測データから求めたCO2吸収・放出量は、過小評価していることが示唆された。現在、センサ付近で急激に伸張してきた樹木の影響を避けるため、測定高度を上げて観測を継続している。 下層植生の森林全体のCO2収支への寄与は、撹乱直後の観測データから推定できたことから、当初の今年度の計画は概ね達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
フラックス観測および毎木調査を継続する。森林構造の変化を把握するとともに、フラックスデータを詳細に解析し、測定高度を上げた後のデータから下層のCO2フラックスを求めることが可能か検討する。また、撹乱直後のデータ及び毎木調査データを踏まえて、下層植生が森林全体のCO2収支に与える影響について評価するとともに、光合成パラメータの抽出および変動特性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
(理由)観測補助による雇用日数が予定を下回った。また、機器のトラブル等で機器校正のスケジュールが予定通り進まなかった。これらの理由により、使用額が予定を下回った。
(使用計画)観測を終了後、データのクオリティチェックのため、センサ校正が必要となる。昨年度行えなかった機器も併せて校正を行う際に使用する。
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Research Products
(3 results)