2017 Fiscal Year Research-status Report
次世代シーケンサーを用いたクロマツにおけるマツノザイセンチュウ感受性遺伝子の探索
Project/Area Number |
16K07792
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
平尾 知士 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所森林バイオ研究センター, 主任研究員 (90457763)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | クロマツ / マツノザイセンチュウ / 感受性遺伝子 / 次世代シーケンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、マツノザイセンチュウ(Bursaphelenchus xylophilus)感染時にクロマツ(Pinus thunbergii)が自ら病徴の悪化を導くネガティブな生体防御反応とその反応を誘導する遺伝子に着目し、次世代シーケンサーを用いた遺伝子型決定法(Genotyping-by-sequencing)を利用した遺伝解析から、マツノザイセンチュウ抵抗性遺伝子の特定を行う。 平成29年度は、平成28年度に作成した抵抗性家系136個体のGBSライブラリーをもとに取得した次世代シーケンサーのデータを利用して、クオリティーコントロール解析から各個体の塩基配列情報についてクオリティーチェックを行い、GBS解析ソフトを利用して一塩基多型(SNP)の検出を行った。クオリティーコントロール解析において、クオリティーが低い1個体及び遺伝子型情報に欠測値が多い7個体、さらに抵抗性家系の親個体1個体を除いた計127個体を遺伝解析の対象個体とした。さらに127個体の多型情報をもとに、メンデル遺伝の理論値に合致する合計6,881個のSNP情報を取得した。 さらに得られた多型情報を用いて、高密度連鎖地図の構築と接種試験によって得られた形質情報を用いた連鎖解析を試みた。高密度連鎖地図の構築では、LODスコアが18以上かつ200以上のマーカーで構成される連鎖グループは12となり、クロマツの基本染色体数に収束し、連鎖群あたりの平均マーカー数は457個となった。構築した高密度連鎖地図情報と接種試験の形質情報をもとに連鎖解析を行った結果、第10連鎖群において感受性形質に寄与するLODスコア6以上の領域を検出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に構築する予定であった高密度連鎖地図は、次世代シーケンサーで分析するためのGBSライブラリーの構築に多大な時間を要したため、シーケンス情報の取得のみとなり、高密度連鎖地図の構築に着手することができなかった。平成29年度では、高密度連鎖地図の構築と形質情報を利用した遺伝統計解析を進めることができ、本研究課題における当初の計画をおおむね順調に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に構築した高密度連鎖地図については、連鎖地図の作成に用いる各個体の遺伝子型情報に多くのエラーが含まれているため、それらのエラーを修正した上でより精度の高い連鎖地図を構築する。また、既存のクロマツ連鎖地図情報との比較及び統合を行うためにアンカーマーカーとしてマイクロサテライトマーカーを用いたジェノタイピングを行い、連鎖地図情報への適用を行う。 連鎖解析より感受性形質との関連が検出された領域については、マーカーの塩基配列情報を利用して、既存のクロマツEST(遺伝子の部分配列)情報やテーダマツ(Pinus taeda)のゲノム情報に対して相同性検索を行うことで、対象となるゲノム領域の特定とそこに含まれる候補遺伝子の探索を行う。
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Causes of Carryover |
平成29年度は、比較的順調に解析を進めることができ、予定していた予算額に対し安価に研究を推進することができた。平成30年度は、候補となる遺伝子の構造解析等を行う予定であり、それらの解析に必要となる試薬消耗品に使用する予定である。
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