2017 Fiscal Year Research-status Report
東南アジアの熱帯山地林と低地熱帯雨林樹木の高温・乾燥耐性の解明
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16K07795
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
田中 憲蔵 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 (30414486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市榮 智明 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 准教授 (80403872)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 熱帯雨林 / 林冠木 / フタバガキ / 乾燥耐性 / 蒸散 / 光合成 / 気孔コンダクタンス / 浸透調節 |
Outline of Annual Research Achievements |
気候変動による干ばつの強度や頻度の増加は、世界中の森林生態系で樹木の枯死、森林機能の劣化等を引き起こす要因になる。特に、年中多湿でこれまで歴史的にほとんど干ばつを経験してこなかった東南アジア熱帯雨林は、他の森林生態系よりも干ばつに対して脆弱である可能性が高い。しかし、樹高50mにもなる熱帯雨林の巨大高木へのアクセスは困難なため、土壌の乾燥ストレスに対する樹木の生理的な応答は不明なままであった。そこで、ボルネオ島の熱帯雨林に生育するリュウノウジュ(フタバガキ科)の成木の周囲に直径30mのビニール製の傘を作り、降雨を遮断することで、人工的に土壌を乾燥させ、樹木の葉の生理生態的応答を調べた。 リュウノウジュの葉は土壌の乾燥に素早く反応し、乾燥から2週間以内に葉の浸透圧を大きく下げより強い力で乾いた土壌から水を吸い続けた。そのため、土壌の乾燥が進んでも午前中は平常時と変わらない活発な光合成・蒸散活動を維持した。午後には気孔の開度が非乾燥処理個体に比べ半分程度に低下するため、光合成や蒸散速度が制限されたが、気孔が完全に閉鎖することは無かった。土壌が乾燥した環境下でも、光合成を行うために気孔を開き、水を消費し続ける生理特性は、さらに強い乾燥が長期間続けは限界を迎え枯死する危険を伴うと考えられた。実際、1997年にボルネオ島で発生したエルニーニョ現象に伴う100年に一度といわれる大干ばつでは、巨大高木でも枯死する個体が相次ぎ熱帯雨林樹木の乾燥耐性が低いことが示されている。この研究の成果は、将来干ばつが頻発した際の熱帯雨林の樹木の応答や森林動態の予測に貢献できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
熱帯林林冠木の乾燥応答を解明した論文を出版でき、乾燥や温度に対する応答実験も順調に行われているため。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度が最終年度となるため論文や学会発表を通じて得られた成果の公表に努める。特に、熱帯山地林樹種の温度に対する葉の生理的な応答や成長反応について現地調査を行いデータを収集し成果のとりまとめを行う。また本プロジェクトでは、マレーシアプトラ大学、サラワク森林局、シンガポール公園庁、シンガポール南洋理工大学、高知大学との国際共同プロジェクトで、MOUなどを通じた協力関係を維持することに努める。
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Causes of Carryover |
現地カウンターパート機関と現地調査についての日程調整や移植した苗の生育状況の確認を行った結果、H29年度に予定していた現地調査をH30年度に先送りする必要が生じたため。
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