2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K07822
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 光秀 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (60466810)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 混合栄養 / 太平洋 / 植物プランクトン / 細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに中部太平洋で実施した表層における混合栄養性生物の現存量および摂餌速度のデータを論文として公表した(Sato et al., 2017, Journal of Oceanography)。 摂餌実験に用いる天然細菌群集を限外濾過による外洋表層から濃縮することを試みた。新青丸KS-16-9次航海を利用し、20 Lの海水を限外濾過した。得られたサンプルを観察したところ、細菌も多く見られたが、大型の夾雑有機物が多く、実用には適さないことが明らかになった。培養株を用いるか、現場の海水に適量の有機物を添加し、現場群集に近い群集を得るほうが有効であることがわかった。 実験室での検討実験を進めるため、各所から混合栄養生物および外洋性細菌の培養株を購入し、維持培養を開始した。いくつかのものについては、速やかな増殖が見られず、維持するのにとどまっているが、ある種の株については好適な増殖が見られ、適宜実験に供することが可能になっている。特にOchromonas sp.は培養条件下で好適な増殖および摂餌特性を示しており、今後の培養実験においては標準実験動物として利用していく予定である。 蛍光標識法としては、これまで用いてきたLysoTracker法、DTAF法に加え、酸性条件下で蛍光強度が高まるpHrhodo Greenを用いた実験の条件検討に着手した。蛍光収率が高く、顕微鏡観察の他フローサイトメトリーで検出可能である上、酸性条件でのみ発色するため食胞に取り込まれていない餌粒子を誤検出する可能性が低く、DTAF法の弱点を補う手法として有望である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの記述的な成果をまとめ上げることができ、次の段階へと進む準備ができた。 また、実験室での測定条件の検討に必要な混合栄養生物および細菌類の培養株を安定的に維持できており、検討実験を連続して遂行するための条件が整った。当初、培養株の増殖が期待したほどは得られなかったため、同位体を用いた実験の検討を行うことができなかったが、来年度以降に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
維持している混合栄養生物および細菌の株を用いて、蛍光法および同位体法の検討を推し進め、今夏に予定されている白鳳丸KH-17-4次航海における北太平洋東西側線において有効な手法を適用する。蛍光法としてはLysoTrackerを用いた食胞染色、旧来のDTAF染色による餌生物標識法に加え、酸性下で強い蛍光を発する色素による餌生物標識を検討する。可能ならば白鳳丸乗船前にも短期の航海で同手法を適用し、有効性を確認する。 航海後は培養株での条件検討、および管理条件下での混合栄養生物の摂餌や増殖の変化を調べ、適宜成果は学会および国際誌にて発表する。
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Causes of Carryover |
本年度中に熊本県立大学一宮睦夫准教授のもとへ出張し、電子顕微鏡サンプル作成を行う予定であったが、先方の準備が当初の予定通り進まず、今年度中の出張ができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
可能ならば本年度(平成29年度)に同様の出張を行うが、スケジュールの都合がつかなかった場合には、電子顕微鏡サンプル作成のために必要な試薬や器具を当方で整備することにより、支出する予定である。
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Research Products
(4 results)