2017 Fiscal Year Research-status Report
ハタ科魚類の種苗生産技術の高度化:成熟・性・不妊化に関する生理学的研究
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16K07873
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
小林 靖尚 近畿大学, 農学部, 准教授 (10643786)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ハタ科魚類 / 性転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
ハタ科魚類は市場価値の高い高級魚で、重要な水産資源である。現在、西日本各地でハタ科魚類の種苗生産が盛んに行われている。しかしながら種苗の生産は不安定で、技術を改良する余地が多く残されている。本研究課題では、瀬戸内海に生息するキジハタをモデルとして既存のハタ科魚類の種苗生産技術を高度化させることを目的としている。 現在、瀬戸内海におけるキジハタの種苗生産は、概ね順調に行われている。その結果、瀬戸内海域においてキジハタの漁獲量は増加傾向にある。今後、野外でのキジハタ資源を効率的に資源管理していくためには、当該水域におけるキジハタの産卵期や性転換サイズなどの資源特性値の集積が求められる。資源特性値を求めるためには、大量のサンプルの性と成熟を、短時間で明らかにする事が可能な肉眼観察が必須となるが、キジハタは性転換魚であることから、性を肉眼で判断できるのか?について明確な信頼が持てない。そこで本研究課題では、現場レベルで即時使用可能なキジハタの簡便な性判別方法を開発してきた。またキジハタの性転換時における脳下垂体と生殖腺の変化を網羅的な遺伝子解析によって解析している所である。加えて本年度から、同じくハタ科魚類であるクエ(E. bruneus)も新たに解析対象種とした。クエに関しては近畿大学水産研究所白浜実験所と共同で研究を進めている。現在これまでキジハタで培っていた性転換誘導技術が、クエに応用可能かを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者が岡山から奈良へ異動になったことから、キジハタを容易に扱う事が困難となったため、当初の計画よりやや遅れている。そのためこれまで得られているサンプルの解析を行うと共に、キジハタの飼育に長けた香川水産試験場と共同で研究を進めている。本年度は、キジハタの脳下垂体と生殖腺のRNA-seqデータから成熟/性分化/性決定関連因子をスクリーニングし、性転換に伴うこれら因子の発現変化を解析している所である。加えて研究代表者の岡山から奈良への移動によってサンプルが得にくくなったキジハタの代わりとしてクエが有効かを確認しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
クエの性転換誘導が成功した暁にはキジハタで得られているデータや手法を使って、クエの性転換に関しても解析を進める予定である。またキジハタのオスからメスへの逆方向の性転換を試みているが、生殖腺を観察したところ、やはり逆方向の性転換は困難な事が明らかとなりつつある。原因を明らかにするため、遺伝子レベルでの解析を行う。その際、とくにステロイド受容体の挙動に着目する。
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Causes of Carryover |
当初、予定していたキジハタを用いた解析を行うことが出来なかったため、少額ではあるが次年度使用額が生じた。現在、計画の再調整中で新たな解析対象魚の選定も終わったところなので、次年度は計画的に使用出来ると考えられる。
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