2017 Fiscal Year Research-status Report
アオコ毒マイクロシスチンLRの第3毒性の発見とその毒性発現機序の解明
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16K07875
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
小松 正治 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 教授 (30325815)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マイクロシスチンLR / ノジュラリン / OATP1B1 / OATP1B3 / アノイキス抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までの研究により,OATP1B1またはOATP1B3発現細胞(HEK293-OATP1B1またはHEK293-OATP1B3)にマイクロシスチンLRを曝露して形質転換したアノイキス抵抗性細胞および細胞骨格再構成細胞はマイクロシスチンLR耐性ならびに低酸素耐性を示すことが明らかになっている。そこで,このようなストレス耐性の獲得機序を明らかにするために以下の解析を実施した。また,生薬成分アクテオシドがマイクロシスチンLRの細胞毒性を減弱することを突き止めており,アクテオシドの作用機序についても検討を加えた。(1)低酸素耐性:アノイキス抵抗性細胞は、親細胞に比べて低酸素曝露および低酸素模倣剤の塩化コバルト曝露に対して有意に耐性を示した。100 µM塩化コバルトの36時間曝露により細胞のHIF-1αの安定化が検出されたが、親細胞はアノイキス抵抗性細胞に比べ、HIF-1αタンパク質の検出レベルが高く、強い低酸素応答が認められた。また,親細胞に20 nM MC-LRを18時間曝露するとマトリクスメタロプロテアーゼの活性が上昇した。(2)ノジュラリンが有すアノイキス抵抗性細胞誘導能:マイクロシスチンLRを構造と性状が類似しているノジュラリン曝露によりマイクロシスチンLR同様の形質転換が認められた。(3)アクテオシドが示すマイクロシスチンLRの細胞毒性抑制能の発現機序:アクテオシドの単独曝露によりHEK293-OATP1B3細胞のERKのリン酸化が検出され,生存シグナルが活性化した。さらにマイクロシスチン-LRにより活性化したp38およびp53のリン酸化がアクテオシドとの複合曝露により緩和され,ストレス応答シグナルが減弱した。一方,蛍光標識ファロイジンのHEK293-OATP1B1細胞内への取り込みに対するアクテオシドの複合曝露の影響を解析した結果,アクテオシド(20 µM)は蛍光標識ファロイジン(0.1 µM)の細胞内取り込みを抑制した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記載はないものの,マイクロシスチンLR特有の機能性と予想したアノイキス抵抗性の誘導能が,構造および機能ともに類似しているノジュラリンにも検出されたため,ノジュラリンを用いた解析も進めたために,研究計画に若干の遅れが生じているが,おおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロシスチンLR誘導型ならびにノジュラリン誘導型の形質転換細胞各2種(アノイキス抵抗性細胞と細胞骨格再構成細胞)の性状解析,特に低酸素抵抗性の獲得機序を詳細に解析する。また,細胞ライセートの抗マイクロシスチンLR抗体を用いたイムノブロット解析の結果,PP1活性サブユニットに相当する分子サイズのバンド以外に複数の成分を検出した。そこで,プロテオミック解析を用いてそれらの成分同定を試みる。
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Research Products
(11 results)