2016 Fiscal Year Research-status Report
若狭湾産の低・未利用食用海藻に含まれる新規抗炎症性成分の探索・精製と性状解析
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16K07879
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
横山 芳博 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 教授 (90291814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細井 公富 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 准教授 (70410967)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 抗炎症性 / 海藻 / 一酸化窒素 |
Outline of Annual Research Achievements |
海藻は、大型藻類の通称であり、藻体の色により緑藻、褐藻、紅藻に大別される。日本では1500種を超える海藻が確認されており、それぞれが異なる環境に適応しているため、含有成分の多様性が期待できる。しかしながら、海藻類を対象とした抗炎症性に関する知見は、海藻類の多様性・種数と比較して、十分に蓄積されているとはいえないのが現状である。そこで、新規抗炎症性化合物および既知化合物の新しい機能性の発見による低・未利用食用海藻類の健康機能性を有する食品としての有効利用と、その機能性がもたらすイメージ向上を目的として、若狭湾産海藻類の採集と粗抽出液を用いた抗炎症性の有無・強弱の検討を開始した。 平成28年度までに、若狭湾の福井県沿岸域において、一般的に市場流通しない約90種類の海藻を採集し、それらの粗抽出液を用いて一酸化窒素(NO)産生阻害活性を指標に抗炎症性を検討した。その結果、ほとんど、または、全く市場流通しないが食用可能な4 種の食用可能な海藻において、強い抗炎症性を有することが明らかとなった。それら4 種の抗炎症性の強さは、極めて強い抗炎症性で知られているウコンと同等レベルであった。また、その他にも13 種の食用可能な海藻において、比較的強い抗炎症性を認めた。 平成28年度はさらに、強い抗炎症を示した紅藻の一種を大量に採取し、中圧カラムクロマトグラフィーを用いてその抗炎症成分の単離を試みた。HPLCによる分離結果より、対象とした紅藻には少なくとも2つの異なる抗炎症成分が含まれていることが示唆された。4 重極型高速液体クロマトグラフ質量分析装置(LC/MSおよびLC/MS/MS)の結果より、HPLCにより分離された一つのピークの成分は残念ながら抗炎症性が既に報告されている既知成分であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、藻類由来の抗炎症成分の単離精製を行う予定であった。対象紅藻類の一種を大量に採集し、そのメタノールを用いた粗抽出液より抗炎症性を示す2つの成分の単離精製を行うところまではほぼ予定通りに進んだといえる。しかしながら、分子のフラグメント解析の結果より、残念ながら得られた2つ成分のうちの一方は、既知のものである可能性が高かった。 また、今回検討した紅藻類から新規の抗炎症成分が得られない可能性があることから、別の一般的には市場流通しないが食用可能な若狭湾産藻類一種を大量に採集し、平成29年度以降の精製実験に備えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度以降は、まず、平成28年度中圧カラムクロマトグラフィーおよびHPLCにより分離した2つの抗炎症成分の残りのもう一方のピークについて、LC/MSおよびLC/MS/MSを用いて構造を推定する。精製海藻抽出成分が新規化合物であると考えられるとき、および、既知化合物ではあるがその化合物に、抗炎症性があること(NO 産生阻害活性があること)が知られていない場合には、その阻害活性の作用機序の解明に取り組む。炎症状態のモデルとして、大腸菌LPS およびマウスIFN-γにより刺激したRAW264.7 細胞を用いて、以下の検討を行う。 1)NO に加えてPG 産生に影響するか否かの検討、2)iNOS およびCOX-2 に対する作用の検討、3)炎症誘発性サイトカインのmRNA 発現に対する作用、4)転写制御因子に対する影響の検討、5)MAPKs 経路に及ぼす影響の検討。 これらの検討によって、LPS およびIFN-γ 刺激(炎症状態となっている)マウスマクロファージ系RAW264.7 細胞において、海藻抽出成分がどのような作用機序で抗炎症性を発揮するのかを明らかにする。即ち、情報伝達系のMAPKs カスケードに影響するのか、炎症メディエーター産生に関与する酵素群の転写制御因子に関与するのか、各種mRNA の発現量や安定性、または、酵素タンパク質の性状(存在量や安定性など)にどのような影響を及ぼすのかを詳細に検討する。
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Causes of Carryover |
新規の抗炎症成分が発見された場合、または、既知成分であるが抗炎症については知られていない物質が得られた場合に、培養細胞などを用いた詳細な作用機序および機能解析を行う予定であった。平成28年度に得られた成分は、残念ながら抗炎症性を有することが知られている既知分子であったことから、培養細胞などを用いる詳細な解析は行わなず、反応系を確認する準備段階の実験であった。そのために、消耗品に用いる使用金額は予定よりも少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度以降に、複数の藻類から抗炎症成分を精製し、それら成分と培養細胞を用いた詳細な作用機序および機能解析を行う予定である。藻類成分の分離精製と成分の構造・機能解析を同時進行的に行うことから、平成29年度および平成30年度は、当初予定よりも必要な金額は増加することから、平成28年度からの繰越分を平成29・30年度に使用することになる。
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Research Products
(3 results)