2016 Fiscal Year Research-status Report
機能性アミノ酸アルギニンの静脈投与がウシの受胎性に及ぼす影響
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16K07982
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
平田 統一 岩手大学, 農学部, 助教 (20241490)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
喜多 一美 岩手大学, 農学部, 教授 (20221913)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アルギニン / ウシ / 定時授精 / 受胎率 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウシの定時授精プロトコールにおいて、定時授精前2日に、アルギニン(Arg)を60g/600ml頸静脈点滴投与する場合と、5g/50ml頸静脈注射する場合を比較・検討し、より実用的で簡易な牛繁殖補助手法を開発しようとした。非投与群の受胎率33.3%に対し5g投与群が60.0%、60g投与群が70.0%と高かった。臨床所見の結果Day0における卵胞径は、5g群が非投与群に比べて大きくなる傾向が見られた。Day7における黄体長径は、5g群が、非投与群に比べて有意に大きくなった。プロジェステロンの血中濃度は、60g群のDay14で他の2群よりも高かった。Arg投与後の頻回採血において、血中Arg濃度は、投与後15分に両区とも明瞭なピークを形成し、60g群の値は5g群の11.6倍だった。60g群の血中オルニチン(Orn)濃度は、血中Arg濃度のピークから遅れて、投与後1-2時間に投与前の濃度の7.2倍前後のプラトーな値となり、3時間後にも高値のままだった。血中NH3濃度は、60g群が投与後1時間に投与前の89.5%に減少し3時間後でも94.0%の低い値となり、5g群は、投与開始後15分に投与前の95.0%に減少し、3時間後には通常の値に復した。Arg 60g投与後の血中尿素濃度は、投与開始後3時間に投与開始前の1.2倍の最高値となった。このようなOrn濃度やNH3濃度の動態は、ArgからOrnが生成されるオルニチン回路を良く反映して合理的であると思われる。 臨床所見の受胎率、成熟卵胞の直径、黄体の長径から判断すると、定時授精プロトコールのDay-2に、Arg 5gの少量投与は、60g投与と同様に有効であるように考えられる。一方、血中P4、Arg、Orn、NH3、尿素の動態は、Arg 5gおよび60g投与にはその反応に大きな相違があるとも思われ、さらに検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初平成29年度に実施予定であった「定時胚移植プロトコールにおけるアルギニン投与の影響」「生体内卵子回収、牛胚の体外生産技術におけるアルギニンの活用」「アルギニン投与後の血中アンモニア濃度の測定」は、一部平成28年度に前倒し実施したことから、計画以上に研究が進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
ウシの定時授精の2日前に、アルギニンを5gまたは60g静脈内投与することで受胎率を向上できることを示した。これにより投与量を大幅に少なくすることが可能となり、産業現場でウシの妊孕性の向上目的でアルギニンを活用するための根拠を示すことができた。しかしながら、血中アミノ酸、アンモニア、尿素、性ホルモン濃度の動態は、60g投与と5g投与ではその様相が大きく異なった。このような矛盾は、アルギニンがウシの排卵卵胞の成熟や卵子の発育能獲得に直接作用することで受胎率改善効果を示すと仮定すれば説明できる。従って、今後は臨床的に様々な場面(定時授精、定時胚移植、疾病など)で、様々な生理ステージ(哺乳期、育成、分娩前後、空胎、妊娠、胎盤形成など)の、様々な用途のウシ(繁殖、肥育、搾乳等)に対し、様々な投与方法(食餌への添加、アルギニンの血中濃度を増加させるためにシトルリンを投与する)て試験を継続する一方で、アルギニンが卵子成熟に及ぼす影響を検証する基礎的試験を行う必要がある。すなわち、ウシ卵子の体外成熟培養液にアルギニンやアルギナーゼインヒビター、一酸化窒素合成酵素インヒビターなどを添加してその発生率を観察したり、成熟培養液にアルギニンを添加、あるいは無添加後に成熟した卵丘細胞、卵子や、発生した胚盤胞の遺伝子発現の相違を、RNA-seq法等を用いて網羅的に検証し、もってアルギニンがどのような機序でウシの妊孕性を改善し得るのか明らかにし、臨床応用、ひいては日本畜産業の発展に寄与する、アミノ酸を用いた栄養学的見地からの新たな繁殖管理法を開発する必要がある。
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Research Products
(3 results)