2017 Fiscal Year Research-status Report
褐色脂肪組織の活性化に寄与する鶏肉・羊肉ペプチドの探索とその機構の解明
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16K08002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
若松 純一 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (30344493)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本田 和久 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (40335427)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 食肉 / ペプチド / 体熱産生 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の試験において、畜種によって消化酵素分解ペプチドに部分的な違いがあることが明らかになったことから、体熱産生能の高い羊肉と鶏肉を、消化酵素で分解したものを分画して投与したところ、鶏肉のある画分に体熱産生効果を有する可能性が示されたため、平成29年度では鶏肉のペプシン消化ペプチドに焦点を絞って検討した。鶏肉では、胸肉ともも肉では肉質が大きく異なり、これは筋線維型の構成割合が大きく異なるためである。筋線維型が異なるとミオシンなどの筋原線維タンパク質はサブタイプが異なり、分子量やアミノ酸配列がわずかに異なる。このため、畜種による食肉の摂取後の体熱産生能の違いと同様に、生じるペプチドのわずかな違いにより、胸肉ともも肉の体熱産生能が異なる可能性がある。さらに、消化ペプチドの分画の方法も検討し直して、動物実験により摂食後の体温を指標に評価したところ、もも肉由来の消化ペプチドが胸肉よりも高い体熱産生効果を示し、筋線維型の違いが体熱産生効果に関係している可能性を示した。分画方法では、消化酵素分解で形成される塩の影響を加味しても、親水性ペプチドに高い効果を有することが示された。エネルギー代謝を亢進することが示唆されたが、in vivoにおけるメカニズムについては明らかにすることはできなかった。一方、肝細胞を用いたin vitroの評価では、鶏肉ペプチドの親水性画分の添加は、脂肪酸の合成を促進し、甲状腺ホルモンの活性化や脂肪酸の分解を抑制して、エネルギー代謝を亢進しない可能性が示された。in vivoとin vitroとで相反する結果を示したことから、鶏肉の消化ペプチドが吸収されて肝臓などの器官には直接作用していない可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題において、(1)畜種による消化・吸収ペプチドの違いに関する研究、(2)褐色脂肪組織活性化作用を有する食肉由来ペプチドの探索、(3)視床下部-下垂体-甲状腺軸活性化作用を有する食肉由来ペプチドの探索、(4)候補ペプチドの食後の体温上昇効果や褐色脂肪増加効果に関する研究、を行う計画を立てた。(1)については28年度に終了した。鶏肉についてはペプチドの絞り込みが進んでいるものの、メカニズムの絞り込みができていない。肝細胞を用いたin vitroでの評価からは、消化吸収されたペプチドが直接各種器官に作用していない可能性が示され、動物実験のみでの有効成分の特定は、使用頭数を増やすことになる。計画の概ね1/2を進んだと思われるが、動物愛護の観点からも、計画を一部変更する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
体温以外の新たな評価方法として、行動性温度調節に基づく評価を行う。試料投与後に温度勾配のある空間にて自由行動させ、快適な温度帯を自発的に探すことで評価する。これは実験動物に負荷がかからず、繰り返し実験が行える実験系となりうるだけでなく、将来的には体を冷やす効果も評価できる可能性がある。絞り込まれた消化ペプチド画分をさらに分画して、評価する。なお、in vitroの評価系については、吸収されたペプチドが直接作用していない可能性が示されたため、この再現性を検討する。
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Causes of Carryover |
培養系の実験の開始時期を遅らせたため、培養細胞や培養に必要な消耗品の支出が遅れた。試験計画とスケジュールの変更は行うものの、予定通り行う。
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Research Products
(1 results)