2017 Fiscal Year Research-status Report
乳房炎実験感染牛での遺伝子組換え蚕由来牛GM-CSFの乾乳期治療に関する実践研究
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16K08065
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
菊 佳男 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門, 上級研究員 (70370179)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮澤 光博 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, ユニット長 (90370684)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 乳房炎 / 乾乳期 / 黄色ブドウ球菌 / GM-CSF |
Outline of Annual Research Achievements |
泌乳期間を終えた乳用牛は、乳腺組織の回復と分娩準備の目的から乾乳期間を設けることが一般的である。乾乳時には、泌乳期間中に治癒に至らなかった乳房炎の治療だけでなく、乾乳直後の乳房内感染を予防する目的で正常乳房内にも抗菌剤注入が行われている。今年度は、乾乳前に実験的に黄色ブドウ球菌(SA)感染させた乳房に対して、乾乳時に既に乳房炎治療効果が確認されている組換え蚕由来牛顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(TGrbGM-CSF)を乳房内注入し、その効果の検証を行った。 供試した乳用牛の乾乳前日に、3乳房にSA(27 cfu/5 ml)、1乳房に生理的食塩水(5ml)を注入した。SA注入翌日に乾乳処置として、2乳房にTGrbGM-CSF(400、40μg/5ml)を注入し、残りの2乳房に生食(5ml)を注入した。乾乳期間を経て、分娩後0、7、14、21、28日の乳房炎発生状況を経過観察し、乳汁及び血液の各種成分について検査を行った。 乾乳期間中の異常は特に観察されなかった。正常分娩を行った直後の初乳中の体細胞数は、全乳房とも100万/ml前後を示した。実験的にSA感染させ、TGrbGM-CSFを用いて乾乳処置した2乳房の乳汁中体細胞数は、経過観察期間中150~300万/mlを推移した。しかしながら、無処置の乳房から得た乳汁からは分娩後SAが検出されなかった。 乾乳直前に実験的にSA乳房内感染させた乳用牛に対して、TGrbGM-CSF(400、40、0 μg/5ml)乳房内注入による乾乳処置を実施したが、本試験では、TGrbGM-CSFによる分娩後の乳房炎発生抑制はできなかった。しかしながら、SA感染が成立していない可能性も考えられたことから、実験感染方法の検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験的SA感染牛に対する乾乳処置をTGrbGM-CSFで行ったが、理想的なSA感染牛の作出ができていない可能性があった。そのため進捗状況はやや遅れているとした。乾乳時に乳房内感染が起こりやすいと考えられているため、乾乳直前に実験的にSA感染を行い、自然界の状況に合わせた計画であった。それに対して、SA感染直前の体細胞数は、80万個/mlと比較的高い値であり、乳房内に白血球が多数存在していた。これによって、今回接種したSAの菌数では感染が成立しなかったことが考えられた。乳用牛は、繁殖周期によって体細胞数が増減することも示唆されており、今回の試験では生理的に体細胞数が高い時期にSA感染させたのかもしれない。
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Strategy for Future Research Activity |
乾乳期間2ヶ月を要する試験であるので、計画的に供試牛を入手し試験を行う予定である。また、乾乳前にSA感染が成立しなかった可能性があることから、乾乳前3日にSA感染を実施し、感染を確認してからTGrbGM-CSFの効果を検討する。
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Causes of Carryover |
(理由)牛の購入価格が上昇しているため、牛の購入にはまとまった予算が必要である。平成29年度の予算を平成30年度に繰り越すことによって、牛の購入と試験の実施が円滑に進めることができると判断したため。
(使用計画)乳用牛を購入する。
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Research Products
(1 results)