2017 Fiscal Year Research-status Report
ゼブラフィッシュ胚で可視化されるトランスジーンサイレンシングに関する研究
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16K08082
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
下田 修義 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 再生再建医学研究部, 室長 (90416173)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | DNAメチル化 / トランスジーンサイレンシング / ゼブラフィッシュ / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
動物や植物の細胞に遺伝子を導入するとしばしばトランスジーンサイレンシングと呼ばれるDNAのメチル化を伴う発現抑制が生じる。私はヒートショックプロモータをもつある融合遺伝子(GFP遺伝子とバクテリアのメチル化酵素遺伝子の連結)をゼブラフィッシュに導入したところ、この遺伝子がトランスジーンサイレンシングの対象となることを偶然見いだした。本研究の目的はこのトランスジーンサイレンシングの生じるメカニズムを知ることにある。 まず、このトランスジーンサイレンシングに関与するメチル化酵素遺伝子を同定するため、平成28年度はゼブラフィッシュのもつ6つのde novoメチル化酵素遺伝子の一つ、dnmt3bb.2の変異体をゲノム編集技術の作製を開始し、本年度(平成29年度)、最終的に三つの機能喪失型欠損変異を得ることができた。dnmt3bb.2の胚性突然変異体(zygotic mutant)はほぼすべての胚が正常に発生したが、母性胚性変異体胚(maternal-zygotic mutant)では血球分化の遅れが観察された。dnmt3bb.2変異体と上記トランスジェニックゼブラフィッシュを掛け合わせ、dnmt3bb.2ホモ接合変異体におけるトランスジーンサイレンシングの変化をGFPの蛍光をもとに解析したが、特に変化は見られなかった。そこでもう一つの de novoメチル化酵素遺伝子dnmt3aaの変異体を共同研究者(広島大学・菊池裕教授)から入手し、これまでに二重突然変異体を作製した。この二重突然変異体は生存・繁殖可能であったことから、現在上記トランスジーンと交配し、dnmt3bb.2, dnmt3aa非存在下でのトランスジーンサイレンシングを解析する準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ゼブラフィッシュの発生は早いが、性成熟にはマウスと同程度の期間、およそ3ヶ月を要する。したがって29年度初めにdnmt3bb.2のヘテロ突然変異体の稚魚を得たが、そこからホモ接合変異体を得るまでに半年、さらにdnmt3aaとの二重突然変異体を得るためにさらに半年、計一年かかった。これは短縮できないので仕方なかった。ゼブラフィッシュは6つのde novo型DNAメチル化酵素遺伝子を持つ。これらの遺伝子に対するアンチセンスモルフォリノオリゴ(MO)を一気に複数インジェクションしてトランスジーンサイレンシングの解除を調べるという方法もあるが、MOは必ずしも遺伝子の機能阻害に効く保証はなく、オフターゲットの心配があるので、今回、時間はかかったが二重突然変異体を作成した理由は、トランスジーンサイレンシングに関わる因子の同定をできる限り遺伝学的に進めていくべきと考えたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
dnmt3aa, dnmt3bb.2二重突然変異体におけるトランスジーンサイレンシングの変化の有無をGFP蛍光強度、およびde novoメチル化レベルに基づき解析する。トランスジーンサイレンシングの解除が見られない場合、残りの4つのde novoメチル化酵素遺伝子(dnmt3ab, dnmt3ba, dnmt3bb.1, dnmt3bb.3)に対するアンチセンスモルフォリノオリゴ(MO)の受精卵への注入や、それらde novoメチル化酵素遺伝子変異体のさらなる導入あるいは作製により、トランスジーンサイレンシングにおけるde novoメチル化酵素遺伝子を突き止める。またMOによる遺伝子機能抑制効果が十分でない場合でも、維持メチル化酵素遺伝子dnmt1の機能が低下していればMOの効果が上がる可能性がある。そこで上記の二重突然変異体にさらにdnmt1の機能低下型変異(hypomorph)をヘテロで加えた三重突然変異体の作製も行う。 トランスジーンサイレンシングに関与する、de novoメチル化酵素遺伝子とは別の因子として私は、ウイルスに対する宿主の防御蛋白質ZAPに注目している。ZAPはCpGリッチなmRNAに結合し、その分解に関与すると昨年報告された(Nature, 2017)。今回ゼブラフィッシュにおいてトランスジーンサイレンシングの対象となっている遺伝子はCpGリッチであり、その転写産物は同じくZAPのターゲットとなっている可能性がある。そこでこのZAPのゼブラフィッシュホモログ、PARP12, PARP12a, PARP12bのMOによる機能抑制を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)適切な実験補助員の雇用が叶わず、人件費を使用することができなかった。またフリーザーの買い換えを予定していたが、所属する研究部の事情により次年度に回さざるを得なかった。
(使用計画)実験補助員を一人(年間60万円)雇用する。また速やかにフリーザーを購入する(60万円)。これらで前年度未使用額は使い切る。来年度の直接経費90万円はほぼ全額消耗品に使用する。
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