2017 Fiscal Year Research-status Report
アルケンおよびアルキンの求電子的活性化を利用した分子構築法の開発
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16K08162
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渋谷 正俊 名古屋大学, 創薬科学研究科, 講師 (40359534)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ホウ素触媒 / 二重ヒドロ官能基化 / アルキン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,アルキル基や水素が置換した単純アルケン及びアルキンに対する新しい求電子活性化法を開発し,それらを用いた新規分子構築法を確立することを目的とした.これまでにヨウ素とシランを用いる触媒系による単純アルケン及びアルキンの分子内ヒドロ官能基化反応やブレンステッド酸とシランを用いる触媒系によるアルキンのヒドロ官能基化反応の開発を行なってきた.本年度は,ブレンステッド酸触媒とヒドロシランを用いる単純アルキンに対する分子内ヒドロアルコキシ化/還元反応を基に,単純アルキンに対する二重ヒドロ官能基化反応へと展開するため検討を行なった.その結果,ブレンステッド酸触媒では,目的の反応の開発は難しいことがわかったが,新たにホウ素触媒を用いることで目的の分子内ヒドロアルコキシ化/ヒドロアリル化反応およびヒドロアルコキシ化/ヒドロシアノ化反応の開発に成功した.これまでにアルキンに対する二重ヒドロ官能基化反応では,二重ヒドロアルコキシ化反応やヒドロアルコキシ化/ヒドロアリール化反応が知られているものの,アリル基やシアノ基が導入されるヒドロアルコキシ化/官能基化反応は初めての報告となる.さらに,ヒドロアルコキシ化/ヒドロアリル化反応とヒドロアルコキシ化/ヒドロシアノ化反応の基質一般性の違いに着目して,それぞれの反応の触媒活性種について知見を得るため検討を行なった.その結果,ヒドロアルコキシ化/ヒドロアリル化反応では,ホウ素触媒がルイス酸触媒としてアルキンを活性化するのに対して,ヒドロアルコキシ化/ヒドロシアノ化反応では,ホウ素触媒とトリメチルシリルシアニドから生成するブレンステッド酸が触媒としてアルキンを活性化していることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに見出したヨウ素とシランを用いる触媒系,ブレンステッド酸とシランを用いる触媒系に加え,本年度は,ホウ素触媒による触媒系の開発に成功し,アルキンの二重官能基化反応への展開に成功したため.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に開発したホウ素触媒によるアルキンの二重ヒドロ官能基化反応の一段階目反応は,分子内ヒドロアルコキシ化反応に限られており,現在のところヒドロアミノ化反応へと展開に関しては問題を残している.そこで,ホウ素触媒によってヒドロアミノ化反応が効率的に進行しない原因を明らかにすると共に,触媒構造や反応条件を最適化することによってヒドロアミノ化/ヒドロ官能基化反応を開発する.また,二段階目の反応としては,これまでに成功しているヒドロアリル化とヒドロシアノ化に加え,更なる多様な官能基を導入可能な反応へと展開する.これまでの研究で,ホウ素触媒が,単純なルイス酸触媒としてのみならず,ケイ素求核剤と組み合わせることで多様な反応性を示すことが分かっている.そこで,今後の研究においても,上記のような多様性を持つ反応へと展開すると共に,ホウ素触媒とケイ素求核剤との組み合わせによる反応性についても解析を行い明らかにしていく予定である.
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Causes of Carryover |
新たに見出したホウ素触媒を用いる反応系に於いて,ホウ素触媒の興味深い反応性が示唆され,計画を変更して反応機構解析等を行なった.その間の新たに必要な試薬等が少なかったため,新たに購入が試薬等の必要な研究を翌年度に行うこととした.
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