2017 Fiscal Year Research-status Report
MRIによる非破壊技術を応用したクリーム剤乳化安定性の高精度予測手法の構築
Project/Area Number |
16K08192
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
大貫 義則 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 客員教授 (10350224)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エマルション / 製剤安定性 / 時間温度換算則 / MRI / スキンクリーム / 合一挙動 / 相分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
Oil-in-water (o/w)エマルションは、クリーム剤などの外用剤に広く利用されている。エマルションの物理安定性は、分散する油滴が凝集し、クリーミングが進むにつれて低下していく。したがって、エマルションを基剤とするクリーム剤の製剤設計において、長期保存した製剤の乳化安定性の評価および予測は最も重要な検討項目と言える。本申請課題では、MRIなどの新規分析評価技術と時間温度換算則などの時系列データ解析手法を組み合わせることにより、長期保存後のクリーム剤の乳化安定性を高精度に予測するための手法を構築することを目的とした。試料として、臨床で実際に使用されている院内製剤(クリーム剤)を選択し、様々な温度条件(30~45℃)における高温加速試験を実施した。各温度での乳化状態の変化(相分離挙動)を評価するために、経時的に試料のMRI画像を撮像し、撮像した画像データを時間温度換算則によって詳細に解析した。検討の結果、本試料の相分離挙動は温度依存性を示し、その乳化安定性評価に時間温度換算則が適用できることが明らかになった。さらに、本手法によって得られた相分離挙動のアレニウスプロットから、本試料の乳化安定性機構に関する深い洞察を得ることができた。本時系列解析の概念は、温度依存的な事象だけでなく、圧力依存的な事象にも適用することができる(時間圧力換算則)。そこで、最終年度では、時間温度換算則に加えて時間圧力換算則を応用した検討を実施し、長期保存後のクリーム剤の乳化安定性を高精度に予測するための手法を構築する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当研究課題では、エマルション製剤の重要な製剤特性である乳化安定性の高精度な保存安定性予測を目的とし、MRIによる試料観察と時間温度換算則を駆使した時系列データ解析についての検討を行っている。現在時点では、研究はおおむね順調に進んでいると考えらえる。本検討の試料には、臨床で実際に使用されている院内製剤(クリーム剤)を用い、初年の検討では、本試料の相分離挙動に時間温度換算則が適用できることを明らかにした。本年度(2年目)の検討では、時間温度換算則から得られた解析結果を精査し、試料の相分離機構について詳細に考察することとした。その結果、MRIの結果から得られたアレニウスプロットは35℃を境に2相性を示し、本試料の相分離機構は35℃以上の高温領域と35℃未満のより低い温度領域で異なることが示唆された。この理由として、試料中の油滴の合一挙動が35℃を境に、高温側と低温側とで著しく異なるためと考察した。そこで、その考察を検証するために、スタビリティーテスターを用いて試料の経時的な後方散乱光強度測定を実施した。検討の結果、申請者の仮説通り、異なる保存温度帯での相分離挙動の差異は、保存温度の変化に伴う油滴合一挙動の差異に起因することが示唆された。エマルション製剤の長期保存安定性を予測する手法については、これまでにほとんど研究が行われておらず、十分な予測手法は確立されていない。MRIによる優れた乳化状態評価技術と時間温度換算則による高精度な予測技術を融合して構築される新規乳化安定性予測手法は、エマルション製剤の高品質化および開発の効率化に大いに貢献すると考えられる。本申請課題の最終年度となる次年度では、本手法のさらなる実用性向上に向けた検討を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ、本申請課題は計画通り順調に進んでいるため、今後も引き続き申請書の研究計画に沿って研究を進めていく。初年度および2年目の検討から、エマルション製剤の乳化安定性を評価するうえで、時間温度換算則の概念が極めて有効であることが示された。本手法を活用することで、短期間の高温加速試験の結果をもとに、常温で長期保存した際の乳化状態を極めて高精度に予測することが可能である。一方で、市販されるエマルション製剤の乳化安定性は一般的に良好であり、汎用される高温加速試験の条件(40℃または60℃)では、短期間で顕著な乳化状態の変化を認めない場合も多い。高温加速試験とともに、遠心分離処理がエマルション製剤の加速試験として広く用いられている。遠心分離法は高温条件で変化の見られない安定なエマルション製剤にも有用な場合が多く、さらに試料を長期間保存することなく直接試料中のクリーミングもしくは沈降を促進させることが可能である。なお、時間温度換算則による時系列解析の概念は、圧力依存的な事象にも適用することができる。その方法論は時間圧力換算則と称される。そこで、最終年度では、時間温度換算則に加えて時間圧力換算則を応用した検討を実施し、より実用的・実践的な評価手法の構築を試みていく。
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Causes of Carryover |
実験の都合により、試料の購入量が少し少なかったため。
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[Journal Article] A comparative study of disintegration actions of various disintegrants using Kohonen’s self-organizing maps2018
Author(s)
Onuki, Y., Kosugi, A., Hamaguchi, M., Marumo, Y., Kumada, S., Hirai, D., Ikeda, J., Hayashi
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Journal Title
J. Drug Deliv. Sci. Technol.
Volume: 43
Pages: 141-148
Peer Reviewed
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[Journal Article] Modeling of quantitative relationships between physicochemical properties of active pharmaceutical ingredients and tensile strength of tablets using a large dataset and a boosted tree2018
Author(s)
Hayashi, Y., Oishi, T., Shirotori, K., Marumo, Y., Kosugi, A., Kumada, S., Hirai, D., Takayama, K., Onuki, Y.
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Journal Title
Drug Dev. Ind. Pharm.
Volume: in press
Pages: in press
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Relationships between response surfaces for tablet characteristics of placebo and API-containing tablets2017
Author(s)
Hayashi, Y., Tsuji, T., Shirotori, K., Oishi, T., Kosugi, A., Kumada, S., Hirai, D., Takayama, K., Onuki, Y.
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Journal Title
Int. J. Pharm.
Volume: 532
Pages: 82-89
DOI
Peer Reviewed
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