2018 Fiscal Year Research-status Report
低分子化合物によるスプライス部位選択制御の分子機構解明と疾患原因変異への応用
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16K08225
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
米田 宏 北海道大学, 薬学研究院, 講師 (60431318)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | pre-mRNAスプライシング / ケミカルバイオロジー / 転写スプライシング共役機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝性疾患やがん細胞においては異常なスプライシングが原因となることが多数報告されており、スプライシングが普段正確に行われる仕組みを解明し、異常となった場合にはそれを是正する方法論の可能性を検証することが重要である。これまでに化合物ライブラリーからの2段階のスクリーニングを経て、3'スプライス部位に変異を含むレポーター遺伝子のスプライシングを正常に戻す活性を示す化合物を同定した。これまでの解析からその作用標的はCDK9であることが示唆されているが、多数存在するCDK9阻害剤を比較すると、同様の活性を示すもの示さないものが存在しており、その作用機序の解明が課題である。本年度はRNA-seqによる陽性化合物の作用機序についてより詳細な検討を行なった。その結果、我々の陽性化合物はトランスクリプトーム全体で特定の遺伝子群の3'UTRの伸長やその伸長された領域でのスプライシングが増加していることを見出した。この伸長が起こる遺伝子群がどのように決まるのかは不明であるが、この遺伝子群で見られた変化を化合物作用の指標として、CDK9の他の阻害剤についてのRNA-seqの結果をメタ解析で比較したところ、化合物が2つのクラスに分かれることを発見した。同じ分子を標的にしながら作用に違いが出る理由として、CDK9のリン酸化ターゲットであるRNAポリメラーゼのC末端部のリン酸化の低下が、化合物ごとにその影響やパターンが異なる可能性を見出し、現在より詳細に検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
化合物の作用標的や作用機序の同定は困難であることが多いが、RNA-seqによる活性評価から、我々の化合物については作用機序の推定が進んでいる。またその過程で、他の同様の化合物との比較を行い、スクリーニングで得られた化合物が持つ作用の特質に着目して研究を進められている点は研究の大きな特徴となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、陽性化合物と他のCDK9阻害剤との違いについて検討を行っているところであるが、スクリーニングで得られた他の化合物にも3'スプライス部位の変異で起こる異常なスプライシングを是正する活性が見られるものもある。またそのような活性は見られないが、細胞内の膜を持たない構造体の形成を大きく変化させる化合物を複数得ている。これらはどれも細胞内のRNAの動態に影響する作用を示すことが明らかになりつつあり、1段階目のスクリーニングで指標とした、スプライソソームのサブユニットであるsnRNPの細胞内量がそれらの化合物によって変化した理由との関連も明らかになりつつある。そのため、これらの化合物の作用解析を進めることで、スプライシングを含めた、RNAの転写から成熟、輸送、翻訳という一連の過程が相互に繋がって協調的に細胞機能を調節している姿が見えると期待している。
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Causes of Carryover |
RNA-seqによる解析結果から陽性化合物の作用機序の特徴に気づき、その後の解析の進め方を見直して再開したのが年度後半であり、まだ実験実施中で結果が判明するまでにもうしばらく時間がかかる。そのため、その結果に関する研究発表なども行っていないため、未使用額が発生している。次年度では進行中の実験とそれを元にした研究発表を行う予定であり、その費用として未使用額を使用する。
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