2016 Fiscal Year Research-status Report
女性の排尿機能障害、特に腹圧性尿失禁に対する新規治療標的の創出に関する基礎研究
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16K08275
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Research Institution | Daiichi University, College of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
副田 二三夫 第一薬科大学, 薬学部, 准教授 (10336216)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 排尿機能障害 / 尿失禁 / VCD / 閉経 / Balb/cマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
雌性BALB/cマウスに4-vinylcyclohexene diepoxide (VCD) 130mg/kgまたはVehicle(0.5% DMSO:対照群)を3週間(連続5日間/週)腹腔内投与し、まず無麻酔・無拘束・無侵襲条件下で、昼夜連続24時間の排尿活動を測定した。 その結果、1.閉経前を反映するVCD投与開始日から24日後において、マウスの安静期である明期の排尿量はVehicle群に比べVCD群で有意に増加した。2.閉経周辺期を反映するVCD投与開始日から52日後において、24時間およびマウスの活動期である暗期の1回排尿量はVehicle群に比べVCD群で有意に減少し、明期の排尿回数はVehicle群に比べVCD群で有意に増加した。3.閉経後を反映するVCD投与開始日から127日後において、最大尿流率は、24時間、明期において、Vehicle群に比べVCD群で有意に減少、暗期においても減少傾向(p=0.051)を示した。4.体重および24時間の飲水量は、排尿活動を測定したすべての期間において、VehicleとVCDの2群間で有意な変化はなかった。 排尿活動の測定終了後にパッドテストを行ったところ、5.失禁様症状を反映する小さな尿スポットの数は、Vehicle群に比べ、VCD投与開始日から52日後のVCD群の66.7%において増加する傾向を示した。 膣スメア採取法にて、VCD投与開始日から212~218日後の性周期を判定したところ、6.性周期が正常である個体の割合は、Vehicle群85.7%、VCD群0%と既報とほぼ同様の結果が得られ、本研究で作成したVCDモデルは閉経モデルとして妥当であることが確認された。 以上の結果から、VCDは雌性BALB/cマウスの排尿機能に影響を及ぼすことが初めて明らかとなり、閉経周辺期を反映するVCD群は、尿失禁のモデル動物になり得る可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度より研究機関を異動したが、異動前の研究機関が熊本地震の影響を受けた。異動前の研究機関に残しておいた機器の故障などもあり、研究のセットアップが当初の予定より大幅に遅れたため。
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Strategy for Future Research Activity |
閉経周辺期を反映するVCDマウスは、尿失禁のモデル動物になり得る可能性が示唆されたため、今後は腹圧性尿失禁のモデルになり得るのか否かについて検討する。具体的には、咳誘発物質であるカプサイシンを閉経モデルに吸入させ、咳の誘発に伴い排尿(尿漏れ)を起こすのか否か、既存の腹圧性尿失禁治療薬クレンブテロールは咳に伴う排尿を抑制するのか否かについて調べ、既存薬感受性の有無を検討する。 今後の研究の進捗状況にも依存するが、ウレタン麻酔下シストメトリーや膀胱平滑筋の収縮実験を行い、VCDマウスは膀胱機能に変化を認めるのか否かについて、さらに排尿機能改善因子であるエンリッチ環境、鎮咳薬の作用についても検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
現在までの進捗状況でも記載したように、平成28年度は熊本地震の影響を受け、研究の予定が大幅に遅れたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究で使用する試薬や動物、器具などの物品費、研究発表の際の旅費として使用する予定である。
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