2016 Fiscal Year Research-status Report
アラクノイドバリアー上皮細胞を実体とする血液脳脊髄液関門の輸送機構解明
Project/Area Number |
16K08364
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
立川 正憲 東北大学, 薬学研究科, 准教授 (00401810)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 血液脳脊髄液関門 / くも膜上皮細胞 / 輸送体 |
Outline of Annual Research Achievements |
循環血液と脳脊髄液(CSF)間の物質交換は、血液脳脊髄液関門(Blood-CSF Barrier, BCSFB)に発現する輸送体によって制御されている。BCSFBの解剖学的実体は、脳室内に存在する脈絡叢上皮細胞とされてきた。一方で、プロスタグランジンD2のCSF中からの消失クリアランスは、脈絡叢取り込みクリアランスとCSF bulk flowでは、27.9 %しか説明できないことをラットで明らかにしており(J Pharmacol Exp Ther 343:608-16, 2012)、未知の排出経路の存在が示唆されている。そこで、本研究では、循環血液間とCSFに位置し密着結合を形成するクモ膜上皮細胞が、血液クモ膜関門(Blood-Arachnoid barrier; BAB)としてCSF中物質の制御に関与していると仮説を立て、その仮説を実証することを目的とした。CSF消失過程における脈絡叢の寄与を排除するために、有機アニオン性蛍光プローブであるsulforhodamine-101(SR-101)をラット大槽内に投与し、CSF中からの排出過程を解析した。SR-101のCSF消失クリアランスはbulk flow マーカーとして大槽内に同時投与したFITC-inulinの4倍以上だった。その消失過程は、有機アニオン輸送担体oatpの基質であるtaurocholate及びdigoxinによって有意に阻害された。脊髄組織切片において、SR-101の蛍光は脊髄クモ膜に限局したが、阻害剤存在下では脊髄実質内でも検出された。以上の結果から、BABには有機アニオン輸送機構が存在し、CSF中有機アニオン性薬物の消失動態に寄与することが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画の通り、血液くも膜関門の輸送機構を解析するための大槽内投与法の確立、血液くも膜関門のCSF動態における寄与の機能的解明、輸送体の発現解析を実施することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
薬物を中心とした血液くも膜関門の輸送機構の解明及びタンパク質絶対定量法を用いたくも膜における輸送体のプロファイリングを実施予定である。血液脳関門(Blood-brain barrier, BBB)や脈絡叢を実態とする血液脳脊髄液関門との機能的類似性と相違性を解明することで、血液くも膜関門の機能的位置づけを明確化する。
|
Causes of Carryover |
輸送体タンパク質定量のための、サンプル調整の一部を次年度に実施予定としたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
サンプル調整のための消耗品購入に利用する。
|
Research Products
(3 results)