2017 Fiscal Year Research-status Report
減数分裂染色体タンパク質のステージ特異的リン酸化とその機能的意義
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16K08461
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
向後 寛 群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (20282387)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 減数分裂 / リン酸化 / チェックポイント / DNA切断 / キナーゼ / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類の減数分裂に必須なタンパク質であるHORMAD1やその近縁分子で減数分裂チェックポイントに必要なHORMAD2は複数のリン酸化修飾を受けることが知られているが、各リン酸化の機能的意義はほとんど明らかにされていない。今年度は、減数分裂初期に起こるHORMAD1のリン酸化について、Ser305のリン酸化がSPO11によるDNA切断に依存することを示した上で、そのリン酸化酵素がATMである可能性を、ATM遺伝子欠損マウスを用いて解析したが、予想に反しATM欠損マウスの精母細胞でもHORMAD1 Ser305のリン酸化が観察された。また、SPO11によるDNA切断に必要な因子であるMEI4およびHORMAD1 Ser305のリン酸化の減数分裂染色体上の局在を比較したところ、MEI4の減数分裂染色体軸上への分布はSer305のリン酸化よりも明らかに早期に見られることが示された。このことから、Ser305のリン酸化はSPO11によるDNA切断よりも後のステップで起こる現象、例えば相同染色体間の組換えなどに関与する可能性が考えられたので、現在組換え関連分子との関係についての解析を計画中である。HORMAD2については、ゲノム編集によりSer284をアラニン(非リン酸化型)やアスパラギン酸(リン酸化模倣型)に置換したマウスの作出に成功し、現在遺伝的背景の均一化を進めながら表現型解析を行い、いくつかの表現型が見られることを確認している。その一部については日本解剖学会で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
HORMAD1のSer307周辺のリン酸化について、関与するキナーゼ候補についての解析や、DNA切断時期との関連を検討したが、当初想定していたようにSPO11によるDNA切断の際にATMによってSer305のリン酸化が起こる、という可能性は否定され、このリン酸化の機能的意義についての解析の進め方について計画の変更が必要となった。また当初計画していた様々なリン酸化状態特異的に結合する分子の同定に関する研究にはほとんど着手できていないことが計画からは遅れている点である。一方で、ゲノム編集によるリン酸化部位の点変異マウスの作出については、当初計画では可能であれば最終年度に着手する、という予定であったが、本研究課題では、既にHORMAD2 Ser284の非リン酸化型およびリン酸化模倣型の変異体の作製が順調に進んでおり、この点においては計画以上の進展が見られている。全体としては、現状では関連分子の同定が遅れているのは問題であると認識しているが、ゲノム編集により作製したリン酸化部位点変異マウスを利用して関連分子の同定を大きく進展させることで、今後遅れを取り戻せるよう努力したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
HORMAD1のSer307周辺のリン酸化については、当初の予想通りの解析結果は得られなかったので、各リン酸化状態の局在や時期について、他のマーカー分子との比較検討を更に丹念に行い、どのようなイベントと相関して起こっているのかを正確に同定したいと考えている。また、ディプロテン期の対合解消と関連するリン酸化状態についての解析も新たな抗体を利用して今後さらに解析を進めていく予定である。一方で、HORMAD2のリン酸化部位のゲノム編集については、非リン酸化型、リン酸化模倣型ともに減数分裂チェックポイントへの影響が見られる可能性が示されていることから、その表現型解析を更に推進すると同時に、これらのマウスの減数分裂細胞を利用して哺乳類の減数分裂チェックポイント関連分子の同定を進めることが可能になると期待している。その成果により、HORMAD1とHORMAD2が中心的な役割を担うと考えられる哺乳類の減数分裂監視機構の分子メカニズムについて重要な知見を得ることで、将来的にはヒトの不妊症、不育症の原因の一端を解明していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画における、HORMAD1やHORMAD2のリン酸化部位に結合する関連分子の同定に関する解析が遅れたため、それに必要な研究費を次年度に繰り越すことになった。次年度の使用計画としては、ゲノム編集により作製したHORMAD2のリン酸化部位の点変異マウスを用いた表現型解析とその部位に結合する因子の同定に主に使用する予定である。ある程度まとまった金額を次年度へ繰り越すことになったので、結果的に研究目標を達成するために有用な点変異マウスの完成後に、当初の予定よりも多くの研究費を関連分子の同定に使用することが可能となり、研究の進展には好都合であると考えている。
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