2016 Fiscal Year Research-status Report
SCYL1メチル化を介したゴルジ体形態・機能制御機構の解明
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16K08465
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
松崎 伸介 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (60403193)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 泰丈 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (00343252)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ゴルジ体 / 小胞体 / 小胞体ストレス / COPI小胞 / SCYL1 / PRMT1 / 蛋白質アルギニンメチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内において分泌タンパク質・膜タンパク質の成熟化機構に関わる小胞体(以下ER)・ゴルジ体が正常に働くということは、細胞・生体機能の恒常性という観点からも非常に重要である。これらの機能異常が、糖尿病・神経変性疾患などの発症経路へ関与するとの報告がなされており、ER-ゴルジ体機能制御の確立は、生物学的および病態医学的に重要な喫緊の課題である。そこで我々は、ERストレスの下流で変動する因子の探索を行い、蛋白質アルギニンメチル基転移酵素protein arginine methyltransferase 1(以下PRMT1)を見出し、RNA干渉法を用いて作成したPRMT1発現低下細胞がゴルジ体形態異常を示すことを明らかとした。本結果に基づき、ERストレスの下流でPRMT1によるメチル化制御を受ける蛋白質群を網羅的に探索するため、ERストレス負荷細胞と対照群から回収したER-ゴルジ体蛋白質分画に対して質量分析を行い、COPI小胞輸送にかかわるSCYL1がPRMT1の基質としてメチル化を受け、ER-ゴルジ体形態および機能の維持に作用している可能性を見出した。そこで、SCYL1のメチル化制御によるER-ゴルジ体形態・機能制御についての検討に着手した。 はじめに、実験系の正確性及び一般性を確認するため、複数種類の細胞を用いてERストレス下でのPRMT1発現変化を確認した結果、ERストレス後に上昇を示し、一定時間以降低下を示すとの結果を得た。また、PRMT1阻害剤として市販されている複数の試薬を用いてメチル化阻害を行った場合、メチル化レベルの低下に伴いCOPI小胞複合体からSCYL1が解離することを見出した。さらには、メチル化領域と予想されるC末端領域のアルギニンに対して変異加えた場合に、COPI小胞との結合解離が促進することを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は研究代表者の異動に伴い、当初の実験立ち上げが遅延することが予想さらた。しかし、スムーズに研究環境が整ったこと、研究分担者・協力者の協力のもと、おおむね順調に進捗した。詳細は以下に示す。 当該年度に実施した研究結果により、小胞体ストレスの下流で認められるPRMT1発現変化が、当初用いていた神経系の細胞のみならず、多組織由来の細胞からも確認されたことから、その一般性を構築することができた。 SCYL1のC端領域に存在するアルギニンに対する点変異体を作成し、COPI小胞との複合体形成を確認したところ、両者の結合が阻害されることから、ERストレス下でのSCYL1(機能的)メチル化領域の有力な候補配列が同定された。 現在、SCYL1点変異体のER・ゴルジ体形態・機能への影響を確認すべく、CRISPR/Cas9をもちいたゲノム編集法によるSCYL1欠損細胞の作製を進めている。 これらの成果は、研究計画に記載されていた当該年度の実施項目をおおむね実施した結果として得られた成果であり、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は申請者の異動もあり、当初進行の遅れも予想されたが、現時点で研究計画はおおむね順調に進展しており、当初の計画にのっとり研究を遂行する予定である。 具体的な研究内容としては 現在作成中のSCYL1欠損細胞株に対してSCYL1の野生型または点変異体を導入し、ゴルジ体形態への影響を免疫染色法により確認する。また、細胞死に対する検討・蛋白質糖鎖修飾への影響を検討する。 また、PRMT1に複数のisoformが存在することが報告されていることから、ERストレス下においてPRMT1のどのisoformが主として作用し、SCYL1メチル化を誘導するのかということが次なる問題点として挙がってきた。そこで上記検討に加えて、ERストレスで上昇するPRMT1 isoformの決定、PRMT1欠損細胞に対する各種PRMT1 isoformの導入を行い、SCYL1に作用するPRMT1 isoformの同定を行うことを予定している。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画はおおむね達成され、予定より進捗が早い項目と遅れている項目が存在する。無駄な予算支出を抑えるために、安定した結果を得てからの物品購入を行っているため、金額的に高くなる遺伝子導入試薬、抗体等の購入が当初の予定より遅れたため、研究費の持ち越しが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予定していた計画を遂行すべく、必要な抗体・試薬等を購入し、研究計画にそった実験を実施する。具体的には、点変異体の遺伝子導入に用いる試薬、細胞死等を判定するための試薬、抗体等の購入を行い、細胞内局在・生理的機能への影響等を確認する。
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