2018 Fiscal Year Research-status Report
ほ乳類の網膜桿体経路におけるTRPM1チャネルの機能的役割
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16K08504
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
田丸 文信 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (70337541)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 網膜 / 双極細胞 / AIIアマクリン細胞 / シナプス / TRPM1 / EPSC / パッチクランプ / 温度 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの申請者の研究から、潅流液の温度を室温から体温に変えると、網膜杆体経路におけるAIIアマクリン細胞のシナプス電流(EPSC)の振幅とinter-event intervalが有意に増加することがわかっている。 TRPチャネルブロッカーであるRuthenium redを潅流液に10~20 micro M加えて記録したところ、AIIアマクリン細胞で観察された温度依存性のEPSCの振幅とinter-event intervalが有意に減少した。また、AIIアマクリン細胞のシナプス前細胞である杆体双極細胞は、Ruthenium redの投与により膜電位が過分極側にシフトした。これらの結果から、AIIアマクリン細胞の温度依存性EPSCはTRPチャネルを介したものであることが示唆される。 潅流液の温度を室温から体温に変えたところ、野生型では杆体双極細胞の膜電位が20 ± 3.7 mV上昇したのに対し、TRPM1 KOマウスでは15 ± 4.2 mVしか上昇しなかった。この5 mVの差はTRPM1チャネルを介した温度上昇である可能性が高い。 これらの結果から以下のメカニズムが考えられる:室温と比べて体温付近では、杆体双極細胞に発現しているTRPM1チャネルの開口確率が上がることで細胞内により多くの陽イオンが流入する→光が当たって杆体双極細胞が脱分極した際、シナプス小胞からより多くのグルタミン酸が放出できるようになる→体温付近ではAIIアマクリン細胞のEPSC(杆体双極細胞から放出されるグルタミン酸を反映)の振幅とinter-event intervalが増大する。すなわち、体温によって神経伝達物質の放出量のダイナミックレンジが上がることで、より精細な視覚情報を得ることが出来ると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2016年度から2017年度にかけて行った、当該研究から新たに展開した研究(2017年に論文として発表済み)により、全体的に遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
全体的に遅れているので、当初の計画に追いつくよう研究を進めていく。引き続きTRPM1 KOマウスを使った実験をおこない定量的な解析を進めるとともに、来年度は論文として発表する。
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Causes of Carryover |
計画全体が遅れているので英文校正費と論文投稿費、および一部の薬品費を使用できなかった。次年度は論文としてまとめる予定なので、残った分を全て使用する。
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Remarks |
埼玉医科大学医学部生理学のHP
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Research Products
(2 results)