2017 Fiscal Year Research-status Report
時間治療のための腫瘍内低酸素と生物時計の相互作用の解明
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16K08532
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
増渕 悟 愛知医科大学, 医学部, 教授 (80362771)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 癌 / 生物リズム |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍低酸素とホスト個体のリズムの相互作用を知るために免役不全マウス(Balb/c nu/nu SLC)に大腸癌細胞株(HCT116 DBP-luc)を移植し行動リズムの観察を行った。飼育環境は照度は約50lux、明暗12時間:12時間、焦電型赤外線センサーで活動を検出した。免役不全マウスにおいても野生型マウスと同様暗期に活動量の上昇がみられたが腫瘍の増大に伴い活動開始時刻が前進し暗期の開始点から明期へ移行、さらには明暗周期に同調できなくなる個体も見られた。ここで外科的に腫瘍を切除したところ手術日から活動開始点は徐々に後退し数日かけて暗期の開始点まで戻った。また手術で腫瘍を完全に切除できなかった個体では腫瘍の再増大に伴い明暗周期からの脱同調も再び見られるようになった。この現象の原因として腫瘍の影響で①生物時計周期が短くなった、②生物時計の光同調機能が弱まった、のいずれかが考えられたため担癌マウスを恒常暗環境に移行させた。その結果、担癌マウスの行動リズム周期は非担癌マウスとほぼ変わらず、②生物時計の光同調機能が弱まった、が正しいと思われた。ヒトで悪性腫瘍随伴網膜症といった病態が知られており本研究においても生物リズム光受容器としての網膜への影響が考えられる。そのため、担癌マウスにおいても網膜のメラノプシン細胞といった光受容細胞の変化を観察する。また今後「癌細胞由来光同調阻害物質」を検索する方向で研究を展開させる。脱同調メカニズムの解明により癌患者の睡眠障害の病態解明に寄与できる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腫瘍とホストの概日リズムの相互作用を明らかにするためのモデルシステムを得ることができた。担癌マウスの行動リズムの光周期からの脱同調モデルの報告は見られないためメカニズムを解明する意義は大きい。これまでの研究で担癌マウスの脱同調は明暗周期への同調力の低下によることが分かったため今後の研究の方向性が明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
担癌マウスの腫瘍切除手術は成功率が低く手術例数を増やして現象を確定する。現在の飼育照度が比較的低いため照度コントロールによるリズム異常の改善を試みる。行動リズムを脱同調させる腫瘍由来の物質の検索を行う。腫瘍の大きさが脱同調の大きさと相関するため腫瘍低酸素で生じる物質について特に調べる。
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Causes of Carryover |
担癌マウス作成、表現型の検出に時間を要した。今年度はメカニズム解明のために担癌マウス作成のスケールアップと原因物質のスクリーニングを行う。
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Research Products
(3 results)