2017 Fiscal Year Research-status Report
バイオドラッグデリバリーシステムを用いた新規心筋再生治療法の開発
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16K08562
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
伊井 正明 大阪医科大学, 研究支援センター, 講師 (10442922)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 心筋梗塞 / 細胞治療 / スタチン / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
シンバスタチン封入PLGAナノ粒子をヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞(human adipose-derived stem cell: hAdSC)に抱合させて各種細胞機能評価を行ったところ、50micro g/5x10^4個hAdSCの割合で作製したシンバスタチン封入PLGAナノ粒子抱合hAdSCが最も機能増強された細胞複合体であることが明らかになったため、今年度はその条件で動物実験を行った。 まず、赤色蛍光色素(DiI)でラベルしたPLGAナノ粒子をhAdSCに抱合した。5x10^4/マウスのhAdSC細胞数で心筋梗塞誘発後3日が経過したマウスに尾静脈投与し、3日後の心筋組織を確認したところ、心筋梗塞巣に一致して多数のDiI陽性細胞が認められ、hAdSCがバイオDDSとして作用することが確認できた。 次に、①PBS投与(Control)群、②hAdSC(1x10^4/マウス)投与群、③シンバスタチン封入ポリマーナノ粒子(10micro g/マウス)投与群、④シンバスタチン封入ポリマーナノ粒子抱合hAdSC(10 micro g/1x10^4/マウス)投与群に実験群を設定し、マウス心筋梗塞モデルを用いてその治療効果を比較検討した。心臓超音波検査による左室収能は、①群に比べて②③群では有意な改善効果は認められなかったが、④群では有意な改善が認められた。また、心筋梗塞誘発後1ヶ月の時点の心筋組織を解析したところ、④群では、瘢痕化した梗塞巣の心外膜側に肉芽組織が認められ、壁厚も比較的保たれていた。蛍光免疫染色による解析では、その肉芽組織は、多数のNkx2.5陽性細胞で構成される幼弱な心筋細胞の集団であることが判明した。さらに、術後と治療2ヶ月を経過したマウスの心臓において、本来梗塞部位となるべき部分に内因性と思われる再生心筋が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29年度は、前年度のin vitroの実験結果を踏まえ、主にin vivoの動物実験を行った。虚血傷害によって梗塞に陥った心筋の再生現象が確認され、予想通りの良好な実験結果を得ることができた。当初の計画通りであり、特に今後の研究推進のために問題点なども現状では抱えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度は、前年度のin vivo実験結果としての心筋再生のメカニズムを解明するための解析実験を主に実施する予定である。今回の実験結果において、移植(静脈内投与)した細胞は、虚血傷害のある心筋組織には集積するものの、術後1ヶ月の時点において心筋組織に集積したhAdSCの残存(他系統への分化)は認められなかった。このことから、心筋再生のメカニズムとしては、外因性ではなく内因性の心筋再生の可能性が高いと考えられる。これまでに、心筋には内在性の幹細胞が存在する報告があるため、それらの心筋細胞への分化がメカニズムのうちの1つではないかとの観点で解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
今年度の実験では、消耗品の使用頻度が予想より少なかったため年度内に使用できない金額は発生した。次年度は助成機関の最終年度であるため、動物実験や必要機器の購入などに繰越金額を次年度予算と合わせて使用する予定である。
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Research Products
(3 results)