2016 Fiscal Year Research-status Report
高血圧腎障害に対する新規治療薬RAGE-DNAアプタマーの開発とメカニズムの解明
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16K08564
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
柴田 了 久留米大学, 医学部, 講師 (10723588)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深水 圭 久留米大学, 医学部, 教授 (80309781)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | RAGE-DNAアプタマー / RAGE / アルドステロン / 終末糖化産物 |
Outline of Annual Research Achievements |
DOCAsalt高血圧マウスは食塩感受性高血圧を呈するが、その原理としてはミネラロコルチコイド受容体(MR)刺激によるナトリウム再吸収亢進であり、MR活性化していることが病態の根幹にある。レニンアンギオテンシン系の亢進も合重なり血圧は上昇するが、アンギオテンシンはCYP11B2などのアルドステロン律速酵素の増加を介して血中や臓器中のアルドステロン濃度を増加させることが報告されている。今年度の更なる検討で、野生型食塩負荷マウスと比較して野生型DOCAsaltマウスは血漿アルドステロン濃度が上昇するが、RAGEKO-DOCAsaltマウスではその上昇が抑制される傾向にあることが分かった。RAGEはアルドステロンの産生を制御する因子であることがわかった。さらにポドサイト培養細胞にアルドステロンを添加するとCMLが上昇し、その上RAGEの遺伝子発現が増加することが判明した。アルドステロンに誘導されたCMLの上昇は、酸化ストレスの一つであるperoxynitriteのscavengerであるMnTBAPによって著明に抑制されることから、アルドステロンは糸球体ポドサイトにおいてCML産生を促し、更にはCML-RAGE系の活性を助長している可能性が考えられた。加えて、CMLは濃度依存性、時間依存性に糸球体ポドサイト培養細胞においてMRの発現を亢進することを掴んだことから、アルドステロン刺激によりMR活性は起きるが、それ以外でもCMLの細胞内での産生を増加させRAGEを介してMR活性をさらに増悪させる、いわゆるvicious cycleを形成している可能性があることを突き止めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の結果から、レニンアンギオテンシン系阻害薬内服中の高血圧患者では、その服薬後に急激に血中アルドステロンが増加する「アルドステロンブレークスルー」により治療抵抗性になることが知られているが、アルドステロンによる臓器障害性の一つの可能性として、アルドステロンにより誘導された終末糖化産物がRAGEを介して細胞障害性を発揮していることが考えられ、RAGE阻害薬の開発は今後の高血圧患者への治療にとって有益であると思われた。 このことから、順調に進展していると考えている。その理由としてはアルドステロン刺激により終末糖化産物がどのように増加するのかそのメカニズムを解明したところにある。我々はperoxynitriteに注目し、そのscavengerであるMnTBAPをco-incubationすることにより、アルドステロン刺激による終末糖化産物の増加を有意に抑制することを発見した。その結果からperoxynitriteはNADPHoxidaseから放出されるラジカルが元であるため、これらの病態でNADPHoxidase阻害薬が良く病態を制御することにも裏打ちされる結果かと考えられる。今後はRAGEの抑制がアルドステロン自体の産生にどう影響するのかを見ていく必要があると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
① RAGEがアルドステロン産生を制御しているのか検討する RAGEKO-DOCAsaltマウスは、野生型DOCAsaltマウスと比較して血漿中アルドステロン濃度が低下傾向にあったことから、終末糖化産物が増加した状態、とくに糖尿病ではアルドステロンの上昇やMR活性が臓器障害を助長することが知られており、それらの病態の一端を解明できるのではないかと考えている。CYP11B2などアルドステロンの律速酵素の発現や副腎でのアルドステロン産生がどのようになっているかを見ていく予定としている。 ② ヒトにおいてRAGEとMRの関連性はどのようになっているのか検討する。 マウスにおいて、MR活性化状態では終末糖化産物とその受容体RAGEが増加することを突き止めた。そこでヒト、とくにアルドステロンが絶対的に増加している原発性アルドステロン症の患者様と健常人を比較して、血中の終末糖化産物濃度、RAGE濃度、MR濃度など測定し、その関連性について検討することとする。
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