2017 Fiscal Year Research-status Report
2型糖尿病由来間葉系幹細胞の単離およびその機能解析
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16K08609
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大根田 修 筑波大学, 医学医療系, 教授 (30311872)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 年晴 筑波大学, 医学医療系, 助教 (50400677)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞 / 創傷治癒 / 糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
生活習慣病の一つである糖尿病は、血糖値のコントロールに加え、病状が進行した際には3大合併症に対する治療が必要となる。とりわけ糖尿病性壊疽を引きおこす創傷遅延はきわめて難治性であり、その遅延を引き起こす詳細な機序は未だ不明である。間葉系幹細胞(MSC)は、様々な組織に存在することが知られており、増殖・分化能に優れていることから、幹細胞治療のソースとして有望である。 本研究では、糖尿病由来MSCの特性を健常者由来MSCと比較検討することにより、創傷遅延を引きおこす原因遺伝子を探索することを目的に行う。in vitroでの機能解析に加え、創傷治癒モデルマウスを用いたin vivoでの解析を行う。 申請者は、既にヒト脂肪由来MSC (AT-MSC)が他組織由来MSCと比較して、1)増殖能が高く、2)血管再生能に優れていることを報告している。 当該研究では、糖尿病患者由来AT-MSCと健常人由来AT-MSCにおいて、以下の項目について比較検討を行った:1)細胞形態、2)細胞増殖能、3)細胞分化能、4)細胞表面マーカー。3)の細胞分化能において、糖尿病患者由来AT-MSCが健常人由来AT-MSCと比較して、脂肪への分化能が亢進していることが明らかとなったが、他項目において有意差は見られなかった。5)の比較項目として、創傷治癒モデルマウスを用いた創傷治癒能の解析を行ったところ、細胞移植後7日目において、糖尿病患者由来AT-MSCにおいて有意に低下していることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
創傷治癒モデルマウスを用いたAT-MSC の創傷治癒能力について、健常者および糖尿病患者間での比較検討を行った。糖尿病由来患者AT-MSCでは、健常者由来と比べて創傷治癒遅延が顕著であることが明らかとなった。遺伝子発現解析により、接着因子であるCyr61の発現が有意に上昇していることが確認された。加えてCyr61の発現を調節してるEGR-1(early growth response factor-1)の発現が糖尿病患者由来AT-MSCにおいて、有意に上昇していることが明らかとなった。 加えて、糖尿病由来患者AT-MSCの機能改善を目的とし、細胞から放出されるマイクロヴェシクル(MVs)を健常者由来AT-MSCより回収し、その機能解析を行った。その結果、MVsを取り込ませた糖尿病患者由来AT-MSCにおいて、細胞遊走能、生存能、血管新生能に係る遺伝子発現が上昇することが明らかとなった。さらに、健常者由来MVsを取り込んだ糖尿病患者由来AT-MSCは、創傷治癒機能回復能が改善することがマウスを用いた実験により明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
創傷治癒遅延の原因として考えられるEGR-1遺伝子が、どのような機能を介して創傷治癒遅延を引き起こしているのかについて、その機能解明を行う予定である。加えて、動物移植モデルにより、原因遺伝子の関与を明確にし、糖尿病由来患者の自家移植方法について検討を行う。 健常者由来MVsを取り込んだ糖尿病患者由来AT-MSCにおいて、創傷治癒能改善が引き起こされた原因因子ついて解析を行う。 また、MSC由来マイクロヴェシクル(MVs)が、MSC以外の幹細胞に対してどのように影響を及ぼすのかについて解析を行い、細胞治療法の開発に発展させる。
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