2016 Fiscal Year Research-status Report
卵巣成熟奇形腫に合併する粘液性腫瘍の遺伝学および臨床病理学的解析
Project/Area Number |
16K08688
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
長坂 徹郎 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (40262894)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 成熟奇形腫 / 粘液性腫瘍 / 卵巣 / 粘液形質 |
Outline of Annual Research Achievements |
卵巣の上皮性腫瘍の起源は、卵巣表面を覆ういわゆる表層上皮とされてきたが、粘液性腫瘍については、奇形腫由来のものも存在すると推測されてきた。実際、我々は奇形腫に合併した粘液性腫瘍のSTR解析から、奇形腫由来の粘液性腫瘍の存在を証明してきた。奇形腫由来の粘液性腫瘍の粘液形質が、原発性の粘液性腫瘍と異なることを利用して粘液性腫瘍のうち奇形腫由来と推定できる症例があるかどうかを検討することが本研究の主題である。本年度は、卒業研究のテーマとして「成熟奇形腫に合併した粘液性腫瘍の免疫組織化学的検討」を採り上げた。成熟奇形腫と同側に発生した粘液性腫瘍6例(腸型3例、頸管型3例)、対側に発生した粘液性腫瘍2例(腸型1例、頸管型1例)、単独に発生した粘液性腫瘍6例(腸型3例、頸管型3例)について主として粘液形質についての免疫組織化学的検討を行った。使用した抗体はCK(cytokeratin)7,CK20,CDX2,MUC1,MUC2,MUC5AC,MUC6である。その結果、奇形腫と同側に発生した腸型の粘液性腫瘍は、単独に発生した腸型の粘液性腫瘍と異なる粘液形質を有し、成熟奇形腫から二次的に発生した腫瘍であることが示唆された。対側に発生した腸型の粘液性腫瘍は単独発生の腸型の粘液性腫瘍と同様の形質を有していた。単独発生の腸型の粘液性腫瘍は、原発性の腸型粘液性腫瘍の形質を示した。この研究に用いた頸管型の粘液性腫瘍は、現行の分類では漿粘液性腫瘍とされ、粘液性腫瘍とは別の分類の上皮性腫瘍として扱われているが、腸型の粘液性腫瘍と異なる粘液形質を示すことが分かり、粘液形質の染色性の違いが鑑別に有用であることも判明した。さらに関連する研究として、修士論文の研究テーマとして卵巣未熟奇形腫のSTR解析を行い、未熟奇形腫が成熟奇形腫と異なる胚細胞の分化段階から発生することを証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は、対象症例数が少なく、さらに症例数を増やして解析する必要がある。さらに原発性と奇形腫由来を鑑別する新たなマーカーについても検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
成熟奇形腫と同側性、対側性、単独の粘液性腫瘍の症例をさらに増やして検討しSTR解析を併用して起源を確定すること、頸管型の粘液性腫瘍の起源をSTR解析を用いて確定すること、ミューラー管由来マーカーのPAX8なども検討に加えるなどを計画している。関連する未熟奇形腫についてもその腹膜病変についてのSTR解析を行い、起源を明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
ほぼ、備品、消耗品として予定した品目は購入できたが、予定した予算を正確に全額使用することができず、繰越金が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越金として主として次年度の免疫組織学染色やSTR解析用の消耗品の購入に充てる予定である。
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