2016 Fiscal Year Research-status Report
慢性GVHDにおける骨髄造血ニッチ傷害の細胞分子機序
Project/Area Number |
16K08730
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上羽 悟史 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (00447385)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | GVHD / 線維化 / 同種造血幹細胞移植 / PDGF |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス慢性GVHDモデルを用いて、慢性GVHD発症時には、骨髄線維化を伴う広範な血球減少が発症することを明らかにしてきた。本年度は、骨髄線維化誘導の分子メカニズムを解明すべく、慢性GVHDモデルの骨髄を急性期から慢性期まで経時的に取得し、マイクロアレイにより網羅的遺伝子発現解析を行った。その結果、移植後14日目までの急性期、移植後40日目の慢性期のそれぞれで特異的に発現変動する遺伝子群が見出された。gene ontology解析により、上記遺伝子群はいずれも、線維化関連遺伝子を有意に数多く含むことが明らかとなった。これらの遺伝子発現の制御機構を予測するソフトウェアを用いて上記遺伝子群の調節因子を推定したところ、PDGF-A, CTGFなどの成長因子を介した、NF-kb, STATパスウェイの関与が示唆された。実際、移植後13日目以降のイマチニブ投与によりPDGFシグナルを阻害すると、GVHDに伴うCol3やSpp1などの線維化マーカー遺伝子の発現が顕著に抑制され、骨髄線維化病変も抑制された。一方で汎血球減少はイマチニブにより改善せず、急性GVHD成立後の骨髄線維化の進展は、骨髄の造血不全に必須では無いことが示唆された。さらに、移植後4日目以降のT細胞除去は慢性GVHDの汎血球減少・骨髄線維化を抑制するが、移植後13日目以降のT細胞除去は同症状を抑制しなかった。以上を総合すると、PDGFシグナルは慢性GVHDの骨髄線維化進展に関与するが、汎血球減少を含めた症状成立の起点は急性GVHDの早期にある可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
経時的な骨髄の包括的遺伝子発現解析により、慢性GVHDに伴う主要な骨髄病変の一つである線維化の発症におけるPDGF経路の関与が示唆され、同経路を阻害することで骨髄線維化が抑制できることが明らかになったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
GVHD(-)およびGVHD (+)群のマウスから、移植後経時的に大腿骨、下腿骨から骨髄細胞を酵素法により調整し、フローサイトメトリーにより浸潤ドナーT細胞サブセットならびに、造血幹細胞以降の各分化段階にある血球画分を解析し、GVHDによる造血異常の作用点を明らかにする。また、免疫表現系と、各種レポーターマウスを用いて、骨芽細胞、線維芽細胞などの間葉系細胞ならびに内皮細胞の量的変化を定量する。造血系細胞および造血ニッチ細胞数の経時解析において、GVHD(-)およびGVHD (+)群の特徴的な差異、またはGVHD (+)群に特徴的な転機を認めた時点については、骨髄組織またはソーティングにより純化したドナーT細胞および造血ニッチ構成細胞集団に関する次世代DNAシークエンサーを用いたトランスクリプトーム解析を行う。造血ニッチ構成細胞における性質変化の分子機序を解析するため、さらにデータベースに基づくネットワーク解析を行い、病的な性質変化に関わる転写因子や、上流および下流シグナルを明らかにする。
|
Causes of Carryover |
2017年4月1日から4月5日にかけてワシントンDC(米国)で行われたアメリカ癌学会へ参加するための旅費、参加費計約53万円を2016年度執行予定としていたが、参加費約15万円が2017年度の執行になったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
前述の参加費約15万円を2017年度に執行する。
|
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] 肺線維症における細胞動態2016
Author(s)
上羽悟史、津久井達哉、七野成之、松島 綱治
Organizer
第40回日本リンパ学会総会
Place of Presentation
東京都(東京大学伊藤国際学術研究センター)
Year and Date
2016-06-24 – 2016-06-25
Invited
-
-
-