2017 Fiscal Year Research-status Report
インターフェロン反応によって確立される抗デングウイルス状態の分子基盤の解析
Project/Area Number |
16K08820
|
Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
鈴木 陽一 大阪医科大学, 医学部, 講師 (40432330)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | フラビウイルス / インターフェロン誘導性遺伝子 / デングウイルス / 黄熱ウイルス / ジカウイルス / 細胞性抗ウイルス因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
インターフェロンシステムは生体におけるウイルス感染防御の主体をなすものであるが、細胞内で抗ウイルス活性をもつ直接のエフェクター分子は、インターフェロン反応によって発現が誘導される interferon-stimulated genes (ISGs) と呼ばれる細胞性遺伝子群である。本年度は、IFN 処理ヒト細胞の mRNA を由来とする cDNA ライブラリーを用いた Gain-of-function スクリーニング法によって同定された遺伝子が抗デングウイルス活性をもつか否かについて検証をおこなった。IFN cDNA ライブラリーの導入と、その後のデングウイルスのチャレンジ感染の結果より得られたウイルス抵抗性 Huh7.5 細胞株から分離された 5 つの候補遺伝子(C19orf53、MRTO4、LINC00052、IFI27、DNAJC14)のうち、DNAJC14 を強制発現した細胞では、デングウイルスの複製が大きく阻害されることが確認された。また、Gain-of-function スクリーニングで得られた DNAJC14 の cDNA は N 末端側の 304 アミノ酸を欠く変異体であったが、全長(野生型)DNAJC14 の発現もデングウイルスに対して阻害効果を示した。自律増殖型デングウイルスレプリコンを用いた実験の結果より、DNAJC14 は細胞内でのウイルスゲノムの複製過程を抑制していることがわかった。さらに興味深いことに、DNAJC14はデングウイルスだけでなく黄熱ウイルスやジカウイルスに対しても抑制効果を示すことが明らかとなった。このことは、DNAJC14 が様々なフラビウイルスに対して共通の阻害機構をもつことを示唆している。一方、IFI27 はデングウイルスに対しては明らかな阻害活性を示さなかったものの、ジカウイルスの感染は抑えられることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
候補遺伝子の抗デングウイルス活性を検証するため、レンチウイルスベクターによる強制発現細胞株の樹立をおこなったが、その樹立に時間を要した。また、RNA 干渉法によって内在性の DNAJC14 と IFI27 の発現を減少させたヒト細胞株の樹立を試みたが、十分な感染価をもつ shRNA 発現レンチウイルスベクターが得られず、今だに樹立に至っていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
候補遺伝子の中から抗デングウイルス因子として絞り込まれた DNAJC14 について、RNA 干渉法を用いたノックダウン実験によって、内在性分子のウイルス複製における関与を解析する。次に、DNAJC14 が標的とするデングウイルス側分子の同定と細胞内における共局在を明らかにする。また、他のフラビウイルス(黄熱ウイルス、ジカウイルス)に対しても同様の解析をおこない、DNAJC14 のウイルス阻害効果が、フラビウイルスに共通の機構を介しているかどうかの考察をおこなう。さらに DNAJC14 の様々なドメイン変異体を作成し、ウイルス増殖抑制にいたる DNAJC14 の最小領域を決定する。これは、広範囲のフラビウイルスに対して効果を示す阻害ペプチドのデザインに役立つものと期待される。
IFI27 に関しては、RNA 干渉実験を用いて、ジカウイルス感染における内在性発現分子の関与を明らにし、ウイルス側の標的分子の同定を試みる。IFI27 は C 型肝炎ウイルスやウェストナイルウイルスの増殖を抑制することが示されており、少なくとも C 型肝炎ウイルスに対しては NS5A タンパクの分解を促進すると報告されている。そこで、ジカウイルスにおいても同様のウイルスタンパクが標的となるのかを調べ、IFI27 感受性フラビウイルスと非感受性フラビウイルスの違いを、分子レベルで考察する。
|
Causes of Carryover |
(理由)平成29年度の進捗状況に若干の遅れがあり、当初実勢すべき実験の幾つかは次年度に早急におこなう予定とした。そのため、次年度使用額が生じた。 (計画)当初の研究計画ですでに予定している平成30年度の実施内容に加え、平成29年度に実施できなかった研究をおこなうための物品費 として主に使用する。
|
Research Products
(8 results)