2016 Fiscal Year Research-status Report
ARMS患者血清中低分子濃度解析ならびに新規ARMS診断分析法の開発
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16K08944
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
福島 健 東邦大学, 薬学部, 教授 (00272485)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻野 尚久 東邦大学, 医学部, 講師 (00459778)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 精神病発症危険状態 / ARMS / ヒト血清 |
Outline of Annual Research Achievements |
本学医療センター(大森病院)へ来院された精神病発症危険状態(At-risk mental state, ARMS)の方(統合失調症の発症には至っていない方)に、本研究の趣旨説明を行い、文書での研究協力の同意を得た方から、午前(朝食前)の時間帯に静脈血(約10 mL)を採血した。一方、学内において健常人ボランティア募集の掲示により集められ、本研究に対して文書による同意が取れた健常人から、同様に午前(朝食前)の時間帯に約10 mLを採血した。これまでにARMS 14名、健常者(コントロール)25名分の血清サンプルを得た(血清中分子の定量を行うまで-80℃で保存した)。これらの血清を使用して、血清中に含まれるL-アミノ酸 16種、チオール化合物 4種、D,L-乳酸、3-ヒドロキシ酪酸、グルコース、クレアチニン、BUN、トリプトファン、キヌレニン、セロトニンをHPLC-蛍光検出法、HPLC-電気化学検出法、LC-MS/MS、LC-TOF-MSを用いて濃度を定量した。ARMS群と健常者群の2群間での有意差検定の結果、ARMS群の方が血清中L-トリプトファン濃度が有意に高くなっており、これは、以前に報告した統合失調症患者では血清中L-トリプトファン濃度が高くなるデータと一致する結果であった。一方、チオール化合物の血清中濃度はARMS群の方が減少傾向にあった。統合失調症患者の血清チオール化合物濃度の減少は、既に幾つかのグループから報告されていることを考えると、ARMSの状態であっても、統合失調症発症時の生体内代謝の状態に近くなっていることが示唆された。他の化合物でもp値が0.1以下のものがあり、今後さらに例数を増やして検討していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度において、本学医療センター(大森病院)へ来院された精神病発症危険状態(At-risk mental state, ARMS)の方の中から、本研究に対して同意を得た方は当初の予定通りの人数である。血清中の低分子定量も予定していた通りに、本学部あるいは当教室所有の機器を用いて行われており、計画に沿って進められていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度も同様に、ヒト血清中の低分子定量を進め、定量した結果の統計解析を行う。また、本学医療センターの精神科(研究分担者が担当する)におけるARMSの臨床所見をスコア化(点数化)し、各ARMSの臨床所見と、有意に相関する血清中低分子があるのかどうかも併せて検討する。また、本研究の課題は、ARMS群、健常者群の2群間比較のみではなく、ARMS群の経月的な血清中低分子濃度変動を追跡する前向き研究でもあるので、今後、同一の被験者から半年毎に採血し、その血清中低分子濃度及び臨床所見を合わせて解析する予定でいる。
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Causes of Carryover |
本研究課題は順調に進められおり、予定していた使用金額とも大きな違いではないが、使用した消耗品(試薬類)に金額の僅かなズレがあったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計画調書どおりに進める予定でいるが、具体的にはARMSおよび健常者血清中の低分子定量に必要なLC-MS用の有機溶媒、誘導体化試薬、HPLC用カラムのほか、新たに研究同意が取れたARMSの方から採取した血清を-80℃で保存する容器(プラスチックチューブ)などの消耗品に対して使用する。
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[Presentation] ARMS 患者,健常人血清中 L-Trp 及びその代謝物の濃度比較解析2017
Author(s)
小山田 紘子, 内藤 瑛子, 高橋 周平, 鈴木 祥, 福本 実理, 小野里 磨優, 一場秀章, 福島 健, 辻野 尚久, 船渡川 智之, 田形 弘実, 根本 隆洋, 水野 雅文
Organizer
日本薬学会第137年会
Place of Presentation
仙台国際センター(宮城県・仙台市)
Year and Date
2017-03-25
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