2016 Fiscal Year Research-status Report
肺の炎症や老化肺に対するビタミンDの抗炎症・組織保護効果の解明
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16K09231
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石井 正紀 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20724438)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 泰弘 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60376473)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 肺の炎症 / ビタミンD受容体 / サイトカイン / COPD |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性閉塞性肺疾患 (Chronic Obstructive Pulmonary Disease: COPD) は、加齢に伴い進行し高齢者で多発する老年呼吸疾患である。肺の老化とも関連するCOPDでは、ビタミンD血中濃度低下が、肺機能低下や重症度と相関することが分かってきている。また、肺におけるビタミンD受容体の発現量の差異が、肺の慢性炎症に影響するのであれば、肺においてビタミンD受容体の発現量を減少させる因子は、COPDの増悪因子となる可能性がある。まず肺組織におけるVDRを介したビタミンDの機能を検討すべく、肺特異的VDR過剰発現トランスジェニックマウスを作製し、肺組織におけるVDRによる抗炎症効果と組織保護効果について検討した。肺特異的VDR過剰発現トランスジェニックマウスにおける肺組織で は、野生型マウスと比較し、RT-PCR、免疫組織染色にて、MIP-1α、IP10、 MCP-1、 MIP-2などのTh1サイトカイン抑制が有意に認められた一方、IL-4、IL-10、IL-13などのTh2サイトカインには有意な差は認められなかった。また、肺胞上皮細胞におけるタバコ煙によるVDRの発現制御や、VDR発現量と炎症性サイトカインとの関連性についても明らかにすべく、胞基底上皮腺癌細胞(A549)を用いて、タバコ煙水抽出液(CSE: cigarette smoke extra)を負荷し、VDR発現量に関してRT-PCRを施行したところ、濃度依存的にCSE負荷によりVDRの発現量の低下が認められ、MIP-1α、IP10、MMP12の発現量の増加を認めた。また、A549を用いてVDR siRNAによるVDR遺伝子抑制を行ったところ、これらの発現量の増加を認めた。以上より、VDRは肺組織局所において抗炎症効果を示し、喫煙はVDR発現量の抑制を介して炎症を修飾する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肺組織におけるビタミン受容体Dの役割とその特性を解析するため、肺特異的VDR過剰発現トランスジェニックマウスを作製し、VDR発現量と抗炎症効果の関係を示すことができた。また、29年度の予定である細胞実験を行うこともでき、VDR発現量と抗炎症効果、また喫煙とVDR発現との関連を示し、特にVDR発現量の抑制を介して、喫煙が炎症を修飾する可能性も示すことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、A549を用いて、ビタミンD受容体のknock downとして、ビタミンD受容体siRNAを用いて、ネガティブコントロールsiRNAとの比較より、CSE負荷およびCSE非添加における炎症性サイトカインの発現量および細胞死数を比較検討し、ビタミンD受容体による抗炎症効果・細胞保護効果を評価する。さらに肺特異的VDR過剰発現トランスジェニックマウスとその野生型同腹仔をケタミンとキシラジンにて麻酔後、大腸菌由来のリポポリサッカライド (LPS) もしくは、コントロールとしてのPBSを気管内に投与し、急性肺損傷モデルを作製する。投与8 時間後と24時間後に、気管支肺胞洗浄液 (BAL) 中の細胞数、細胞分画と蛋白濃度を評価する。定量的RT-PCR、免疫組織染色により、肺組織におけるTh1サイトカイン、Th2サイトカイン、MMP-1、MMP-12、TIMP-1の発現量を解析し、肺組織の炎症を評価する予定である。また、25 cmH2Oの一定圧を気管内にかけながら伸展固定した肺の組織像を評価する。この組織を利用して、上記抗体の組織免疫染色を行う予定である。これらの評価により、急性炎症としてのビタミンD受容体による組織保護、抗炎症効果を検討する。
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