2017 Fiscal Year Research-status Report
TREM2に着目した肥満・糖尿病合併認知症予防の為の新規評価系・治療戦略の開発
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16K09276
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| Research Institution | Department of Clinical Research, National Hospital Organization Kyoto Medical Center |
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Principal Investigator |
田中 将志 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 内分泌代謝高血圧研究部, 研究員 (60381167)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 浩二 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 展開医療研究部, 研究部長 (50283594)
小谷 和彦 自治医科大学, 医学部, 教授 (60335510)
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| Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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| Keywords | 肥満 / 糖尿病 / 単球 / ミクログリア / 炎症 / 血管合併症 / 認知症 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、初年度に、肥満・糖尿病モデルマウスの骨髄単球や炎症性腹腔マクロファージ（Mφ）にて発現が亢進する遺伝子としてTriggering receptor expressed on myeloid cells 2（TREM2）遺伝子を同定した。TREM2は主に単球・Mφ・ミクログリアに発現し、その機能との関連や、ゲノムワイド関連解析より認知症との関連も示唆されている。本年度は、申請者らによる肥満症・糖尿病多施設共同前向きコホートを基盤とした横断解析から、糖尿病における血清TREM2の臨床的意義を検討した。その結果、非肥満糖尿病群では、血清TREM2上昇が認知症のリスク因子（高血糖・炎症亢進）と関連し、さらに認知機能低下と関連することを見出した。一方、肥満糖尿病群では収縮期血圧上昇が認知機能低下と関連した。よって、非肥満糖尿病群では血清TREM2が、肥満糖尿病群では収縮期血圧が、認知機能低下の新規予知指標となる可能性を明らかにした（Diabetes Metab 2017）。
最近、認知機能低下には、筋力低下や腸内環境悪化が関連する可能性が注目されつつあるが、その関連におけるTREM2の関与は不明である。そこで、まず初めに、糖尿病における腸内細菌叢の病態意義の検討を行った。その結果、日本人糖尿病では菌叢の構成・機能が変化し、さらに宿主の糖代謝悪化と関連することを認めた（J Clin Biochem Nutr 2017）。また、肥満では骨格筋の再生不良が生じるが、本研究にて、肥満に伴い骨格筋由来液性因子・CXC chemokine-ligand-1 (CXCL1)の発現が亢進され、筋管形成が促進されることを認め、肥満における骨格筋量維持のための新規機構を明らかにした（Acta Physiol 2018）。今後、今回認めた関連におけるTREM2の病態意義を検討予定である。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 初年度までに、肥満・糖尿病モデルマウスの検討から、新たな肥満・糖尿病感受性遺伝子として、単球・Mφ・ミクログリア機能に関わり認知症との関連が示唆されるTREM2を同定した。本年度では、申請者らにより構築された肥満症・糖尿病多施設共同前向きコホートを対象に、糖尿病における血清TREM2の病態生理学的意義を検討した。その結果、非肥満糖尿病患者にて、血清TREM2は、高血糖・炎症亢進を介した認知機能低下の新規バイオマーカーである可能性を初めて明らかにした（Diabetes Metab 2017）。本成果に立脚し、現在、当該コホートにて、認知機能低下に関する縦断解析等、糖尿病患者における血清TREM2の臨床的意義についてさらなる検討を進めている。
2. 生活習慣病やその合併症（脳心血管病等）との関連が示唆される腸内環境について、当該コホートを基盤に、日本人糖尿病における病態意義を検討した。その結果、糖尿病による腸内細菌叢の構成・機能の変化を認め、さらにそれが宿主の糖代謝悪化と関連することを初めて見出した（J Clin Biochem Nutr 2017）。よって、糖尿病に伴う認知機能低下に関し、単球・ミクログリア機能とともに腸内環境の重要性も示唆され、現在、腸内環境と炎症、単球機能やTREM2との関連が認知機能低下にどのように関わるかについて検討を開始している。
3. 認知症との関連が注目されつつある骨格筋萎縮について、肥満では骨格筋の再生不良が生じるが、本年度は、肥満により骨格筋由来液性因子・CXCL1の発現が亢進することで、筋管形成が促進されることを見出した（Acta Physiol 2018）。よって、肥満における骨格筋量維持のための新規機序としてCXCL1の関与が示唆され、認知機能との関与の検討のため、単球機能やTREM2とCXCL1との関連解析の準備に着手している。
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| Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果に立脚し、平成30年度は、以下の計画I、IIにより、肥満・糖尿病に伴う認知機能低下におけるTREM2の病態生理学的意義を明らかにすることで、TREM2に焦点を当てた肥満・糖尿病に伴う認知機能低下予防のための新規評価系・治療戦略の開発を目指す。
I. 肥満・糖尿病に伴う認知機能低下におけるTREM2の臨床的意義の解明（臨床研究）
申請者らによる肥満症・糖尿病多施設共同前向きコホートを基盤とした縦断解析にて、認知機能の変化と、血清TREM2、単球機能や体組成・代謝指標・炎症・腸内環境やCXCL1レベル等の変化との関連を検討し、認知機能低下に影響する因子としてのTREM2の機能的意義を解明する。また、生活習慣改善（食事・運動療法等）や生活習慣病薬（糖尿病薬等）が血清TREM2や単球機能に及ぼす影響を解明する。
II. 肥満・糖尿病におけるTREM2の機能的意義の解明（基礎研究）
モデルマウス（肥満・糖尿病モデルやTREM2欠損）を用い、高脂肪食負荷による認知機能変化、脳の組織学的変化、単球・ミクログリアの機能的変化、脂肪組織や骨格筋を含む各組織の炎症レベル等を検討する。ミクログリア細胞株等を用い、遊離脂肪酸・高血糖等の刺激に対するTREM2発現変化（エピジェネティクス等）、抗TREM2刺激抗体による機能変化、関連シグナル経路の活性化レベルや炎症応答への影響を検討する。さらに、生活習慣病薬等によるTREM2及び炎症応答に対する影響を同様に検討する。以上、肥満・糖尿病におけるTREM2の機能的意義・病態生理学的意義を明らかにする。
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| Causes of Carryover |
本研究計画における肥満症・糖尿病コホートについて、脳心血管イベント等の判定・評価等を詳細に検討しているため時間がかかり、次年度使用額が発生した。次年度には当該使用額も含め、研究計画にのっとって研究費を使用し、研究を推進する。
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[Journal Article] Prediction of functional profiles of gut microbiota from 16S rRNA metagenomic data provides a more robust evaluation of gut dysbiosis occurring in Japanese type 2 diabetic patients2017
Author(s)
Inoue R, Ohue-Kitano R, Tsukahara T, Tanaka M, Masuda S, Inoue T, Yamakage H, Kusakabe T, Hasegawa K, Shimatsu A, Satoh-Asahara N
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Journal Title
J Clin Biochem Nutr
Volume: 61
Pages: 217-221
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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