2016 Fiscal Year Research-status Report
NUP98融合遺伝子を有する白血病の発症・維持機構の解明
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16K09864
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
島 豊 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (90572298)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 白血病 |
Outline of Annual Research Achievements |
私はNUP98融合タンパク質にヒストンアセチル化酵素ASH1Lが結合することを見いだしていた。そこで、当該年度はNUP98融合遺伝子を有する白血病の発症・維持に、ASH1Lが関与するかをAsh1l コンディショナルノックアウト(cKO)マウスを用いて検討した。NUP98-HOXA9融合遺伝子を発現させ不死化したマウス骨髄細胞からAsh1lをノックアウトしてもin vitroにおけるコロニー形成には影響はなかったが、この細胞をマウスに移植して白血病発症能について検討するin vivoの実験を行った結果、Ash1lが欠損すると顕著にNUP98-HOXA9による白血病発症が遅延することが明らかとなった。次にこのAsh1lを欠損した白血病細胞を、別のレシピエントマウスに移植した。その結果、Ash1lを欠損した白血病細胞は、マウスで白血病を発症させることができないことが明らかとなった。この結果はAsh1lがNUP98融合遺伝子による白血病発症に必須であることを示唆している。 また、私はNUP98融合タンパク質に脂肪酸合成酵素FASNが結合し、その活性をNUP98融合タンパク質は負に制御することをすでに見いだしていた。そこで、当該年度はNUP98融合遺伝子を有する白血病細胞に対するFASNの関与を検討するため、Fasn cKOマウスを用いて検討した。FasnをノックアウトするとNUP98融合遺伝子を有する細胞のコロニー形成は阻害されたが、それ以外の白血病で見られる融合遺伝子によるコロニー形成は阻害されなかった。この結果は、今までに得ているFASN阻害剤を用いた実験結果ならびにFASNに対するshRNAを用いた実験結果と一致するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、当該年度はAsh1l、FasnそれぞれのcKOマウスを用いて解析を進める予定であったが、予定通りそれぞれのcKOマウスを用いた解析を進められたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Ash1l cKOマウスを用いた実験では、in vivoの系でAsh1lの重要性が示されたので、in vivoの移植の実験を行い、Ash1lを欠損させた時にどのような遺伝子の発現が抑制されるのか網羅的に解析する予定である。すでに既存の白血病発症に重要な遺伝子群の発現に関しては検討しているが、これら発現はAsh1lを欠損させても変化がなかったことから、新規の白血病発症に重要な遺伝子発現を明らかとする予定である。 Fasn cKOを用いた実験では、まだin vivoの白血病発症実験でFasnの重要性が評価できていないので、こちらを優先的に行い、Fasnの重要性をin vitro、in vivoの系で明らかとし、脂肪酸合成経路を中心とした代謝経路を詳細に調べて行く予定である。
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Causes of Carryover |
物品の価格変更等で計画通りの金額とはならなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の物品費として使用する。
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