2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K09866
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 聡 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (60226834)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 浩一 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任先任准教授 (10360116)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 血液免疫学 / 血管内皮造血転換 / 造血幹細胞 / 造血促進 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究で研究代表者らは、生体内外の実験系を利用し、骨髄における造血幹細胞と血管内皮細胞、そして間葉系細胞等のニッチ細胞間の相互作用、そして、造血幹細胞移植における血管内皮細胞の機能解析を進めた。今年度の実験を通じて研究代表者らは、血管内皮細胞から産生される組織型プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)が、造血幹細胞と共に間葉系幹細胞分画に属する細胞の末梢血中への動員を促進すると同時に、これらの幹細胞の細胞周期をS期へと誘導することをマウス生体の実験で明らかにした。また本研究により、tPAは、生体内で、matrix metalloproteinase (MMP)の活性化を通じて、間葉系幹細胞を含むニッチ細胞からの造血因子Kit-ligandの細胞外ドメイン分泌を促進し、これらが血管内皮細胞表面に発現するc-kitへのシグナル伝達を惹起すること、そしてこれらのシグナルは、血管内皮細胞のplatelet-derived growth factor-BB(PDGF-BB)あるいは、fibroblast growth factor-2(FGF-2)等のアンジオクライン因子の産生亢進を誘導し、PDGFはドライバー、FGF-2はアンプリファイアーとして、PDGF受容体を有する間葉系幹細胞動態を制御すること、血管内皮が、アンジオクライン分子の産生と間葉系細胞動態を通じて、骨髄造血を制御する新しい機構の存在を示唆した。これらの研究成果については、国際誌上により原著、総説の形で報告しており、現在、生体内の造血幹細胞と血管内皮系細胞、間葉系細胞等のニッチ細胞動態との相互作用の詳細、そしてこれらニッチ細胞の造血幹細胞移植上の具体的意義について、移植モデルとヒト細胞でも精査中であり、造血幹細胞移植臨床における今年度の研究成果の意義について、臨床検体を利用した解析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況として、本研究計画全体の基礎となる、成体血管内皮による造血促進作用を、マウス生体内外で確認し、その制御機構について詳細解明の上、数本の論文を今年度中に発表出来たことは、本研究計画の初年度であることを勘案すると、研究計画をやや上回る成果と進展がみられたものと研究代表者らは考えている。また、これらの今年度までに得られた実験結果についても、血管内皮細胞から分泌されるアンジオクライン分子群による間葉系幹細胞、間葉系ストローマ細胞群の動態、活性調節を通じ、造血幹細胞を含む造血系細胞動態が制御されているとする、研究計画の段階で立案された、血管内皮を中心とした造血制御機構の存在を支持する、当初の仮説におおむね沿った内容であり、現在までのところ、来年度以降の研究展開についても、明確な修正点は特に見当たらない。加えて研究代表者らは、今年度の研究で、green fluorescent protein遺伝子改変マウスの骨髄細胞移植による、造血幹細胞移植モデルの作製、フローサイトメーターによる造血、血管内皮、間葉系細胞の分離採取の行程までの実験法、解析技術を確立しており、現在、研究代表者らは、今年度までの研究成果を基礎とした、造血幹細胞移植における血管内皮細胞の意義、機能解明をマウス生体、ヒト由来細胞株等を使用し、進めている状況であり、来年度の日本血液学会をはじめとして、研究成果についての情報発信も予定している。これに並行して、研究代表者らは、ヒト臍帯由来血管内皮細胞、及び血管内皮細胞株、ヒトあるいはマウス骨髄細胞等の生体外培養系についても、今年度発表論文の作製過程でほぼ確立しており、来年度以降の研究計画の遂行については、手技、技術面でも十分な準備状況にあると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度以降は、今年度の研究成果を基礎とした造血幹細胞移植における血管内皮細胞の機能解明を進め、green fluorescent protein遺伝子改変マウス(GFPマウス)の骨髄細胞を用いた造血幹細胞移植モデルにおける、血管内皮系、あるいは間葉系細胞表面マーカー陽性の細胞群を共移植する群を設け、造血幹細胞移植における有意性、また移植生着に対する有効性を確認する実験を進める。この系においては、生着の有無にかかわらず各種パラメーターを解析すると共に、血液線維素溶解系(線溶系)因子や、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)等の各種蛋白分解酵素群、接着分子、血管内皮特異抗原、血球系マーカーの発現等について免疫学的特殊染色を施行し、各種臓器組織中の血管新生、血管内皮細胞と血管周囲―血管ニッチ細胞の性状、骨髄内外の各種MMP あるいは線溶系因子活性等について精査することにより、マウス生体内外の造血幹細胞移植における血管内皮細胞の機能解明を進める。また、今年度までに手技を確立したヒト臍帯由来血管内皮細胞及びマウス血管内皮細胞株、あるいはGFPマウス骨髄細胞中の血管内皮系細胞表面マーカー陽性の細胞群、さらにはこれらの細胞へのE4ORF1 遺伝子導入群を用いた生体外実験系を中心に、ウィルスベクターを使用したアンジオクライン因子、サイトカイン、ケモカインをはじめとする生体因子の強制発現系、ないしは様々なストレス条件下での血管内皮細胞、そして造血系細胞、造血・血管ニッチ細胞の動態、そして内皮造血転換の誘導とその確認を試みる。さらには、造血幹細胞移植モデルを使用し、マウス生体内における内皮造血転換の誘導とその確認を進めていくこととする。また来年度より、これまでの研究成果を中心に、今年度あまり出来なかった学会発表や総説の発表を通じた、情報発信を積極的に行っていくことを予定している。
|
Research Products
(6 results)
-
[Journal Article] Impact of graft-versus-host disease on outcomes after unrelated cord blood transplantation.2017
Author(s)
Kanda J, Morishima Y, Terakura S, Wake A, Uchida N, Takahashi S, Ono Y, Onishi Y, Kanamori H, Aotsuka N, Ozawa Y, Ogawa H, Sakura T, Ohashi K, Ichinohe T, Kato K, Atsuta Y, Teshima T, Murata M.
-
Journal Title
Leukemia.
Volume: Mar 31(3)
Pages: 663-668
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-
-
-