2017 Fiscal Year Research-status Report
疾患モデルフィッシュを用いたペルオキシソーム病発病因子の特定と治療法の開発
Project/Area Number |
16K09963
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
高島 茂雄 岐阜大学, 生命科学総合研究支援センター, 助教 (50537610)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ペルオキシソーム形成異常症 / ペルオキシソーム / 極長鎖脂肪酸 / プラズマローゲン / フィタン酸 / PEX遺伝子 / ゼブラフィッシュ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではヒト先天性代謝異常疾患であるペルオキシソーム形成異常症の病態解明を目的に疾患モデルフィッシュの解析を行っている。疾患モデルとしてヒト疾患の原因遺伝子であるpex2遺伝子をゲノム編集により破壊したゼブラフィッシュ系統を用いている。本年度はまず疾患モデルフィッシュ(以下pex2変異体と記載)で観察される脂肪肝について昨年度に引き続き表現型の解析を行った。pex2変異体では肝臓に中性脂質が脂肪滴の形で蓄積することを明らかにしていたが、この脂肪滴はpex2変異体の成長に伴い肥大化し、脂肪肝が重症化していくことが分かった、複数のpex2変異体から肝臓を摘出し、LC-MSにより脂肪酸の網羅的解析を行い、脂肪酸の代謝変動を明らかにした。さらにpex2変異体からRNAを抽出し脂肪肝形成に関連すると疑われた小胞体ストレス関連遺伝子の発現変動解析を行った。その結果pex2変異体では小胞体で機能する2つのシャペロンタンパク質遺伝子の発現が亢進していることを明らかにした。肝臓の表現型に小胞体ストレスが関与していることが示唆された。また、ペルオキシソーム形成異常症患者で重篤な症状が現れる脳と眼について、組織中脂肪酸の網羅的解析を行った。その結果これらの組織ではエーテルリン脂質の低下を含めた特徴的な脂肪酸・脂質関連物質の代謝変動が起こっていることが判明した。今後それらの代謝変動につながる遺伝子発現変動をマイクロアレイ解析によって明らかにし、本疾患の病態発症メカニズムの解明につなげる実験を行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの疾患モデルフィッシュを使った実験により、ペルオキシソームの形成異常が軽度の小胞体ストレスを引き起こしその結果脂肪肝が誘導されることを見出した。さらにLC-MSを用いた脂肪酸の網羅的な解析によって脳や肝臓における脂肪酸の代謝変化の様子を明らかにすることができた。これらの新しい知見をもとにペルオキシソーム形成異常症の発症メカニズムと病態解明が進むと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はマイクロアレイ解析によりペルオキシソームの形成異常で引き起こされる遺伝子発現変動を調べ、広範な表現型の原因となる遺伝子の発現変動を明らかにする予定である。さらに変異体が示す行動異常の原因として小脳の異常が考えられるため、小脳構造異常について詳細な解析を行う。また、並行して行っているヒト培養細胞を使った実験から見い出されたペルオキシソームの代謝経路に介入する薬剤を用いて、変異体の代謝の正常化と表現型の回復を指標とした介入実験を行う予定である。
|