2016 Fiscal Year Research-status Report
ダウン症候群の核型正常化による合併症の予防および治療法確立に向けた研究
Project/Area Number |
16K09964
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
橋詰 令太郎 三重大学, 医学系研究科, 助教 (50456662)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮川 世志幸 日本医科大学, 医学部, 講師 (90415604)
緒方 藍歌 名古屋大学, 医学系研究科, 研究員 (70718311)
高成 広起 徳島大学, 病院, 特任講師 (70723253)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ダウン症候群 / トリソミー / 染色体工学 / ゲノム編集 / iPS細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ダウン症候群由来細胞を用いて、トリソミックレスキュー、すなわち過剰な21番染色体を消去する方法の科学的探索および確立、ならびに知見を統合して最適な新規治療用遺伝子ベクターの構築を志向するものである。本研究に用いるダウン症候群由来細胞は、研究の方法・目的上、21番染色体の各々のアレルの由来、すなわち各々のアレルの父母由来情報が少なくとも必要である。この点、細胞バンクなどから提供を受けた細胞では、アレル情報が不明である。したがって、本研究では、新規に承認された臨床研究として、両親の部分的なゲノム情報とともに、新たにトリソミー21由来細胞を調達し、研究の基盤を構築した。さらに採取された培養細胞(皮膚由来線維芽細胞)から不死化線維芽細胞、および人工多能性幹細胞(iPS細胞)株を樹立した。 一方、研究を行うための実験計画の機関内承認(臨床研究1、組換えDNA実験計画7)の取得、特定の遺伝子を発現するウイルスおよび非ウイルス性の複数の発現ベクターの構築、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)や染色体展開標本を用いたG-banding等の評価系の確立、およびiPS細胞、線維芽細胞のシングルセルクローニング法の確立がなされた。 また、in vivo使用のベクターとして、エクソソームを細胞培養上清から超遠心法にて単離し、透過型電子顕微鏡にて確認した。単離したエクソソームにpCMV-EGFPモニタープラスミドを封入し、他大学との共同研究として、ヒト線維芽細胞への導入効率をin vitroで評価した。結果、予想外の高効率(70%以上)で遺伝子導入が確認され、ベクターとしての有用性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は、1つの臨床研究、7つの組換えDNA実験計画の承認を得て、研究が開始された。核型正常化作用があるとされる遺伝子のクローニング、ウイルスないし非ウイルスの発現ベクターの構築、複数の染色体解析の評価法の確立を行った。 具体的には、当大学病院にてダウン症候群の人より線維芽細胞を採取し、hTERT遺伝子導入にて不死化線維芽細胞株を樹立した。本株は、長期間の培養(>100PDL)にても、トリソミー21の核型が維持されることを確認した。また、実両親のSTR解析と併せ、当該細胞の21番染色体の各アレルの由来を同定した。本研究においては、ウイルスベクターによる特定蛋白質の発現細胞作成やゲノム編集が可能であったが、シングルセルクローニングが困難である事が判明した。増殖能を停止させたフィーダー細胞を用い、線維芽細胞に薬剤耐性遺伝子を挿入する事で、シングルセルクローニングを行える実験系の構築に成功した。しかしながら、十分量のクローニングされた線維芽細胞を得るまでに長時間(数ヶ月)が必要である事が判明した。この問題を克服するために、細胞周期の短いiPS細胞を用いる戦略を採った。非不死化線維芽細胞からエピソーマルベクターを用いて、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を誘導し、数株を樹立し、特異的マーカーを用いた免疫染色法にて未分化状態を確認した。また、これらiPS細胞が、培養器コーティングなしの条件で、かつ単一分散法で未分化状態を維持しながら増生すること、シングルセルクローニングが比較的短時間で可能である事を確認した。以上の次第であり、主としてこれら研究材料の変更により実験実施予定が順延し、研究進捗としてはやや遅れているものと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、トリソミー21由来細胞を用いて、核型正常化作用があるとされる遺伝子の細胞内導入、その後の核型の詳細な評価を行う。シングルセルクローニングが比較的短時間で行えるiPS細胞を中心に実験系を組み、場合によって分化細胞である線維芽細胞を用いて実験を行う。核型正常化作用がある推定される遺伝子で我々がリストしたものは50を超えるため、理論的で合理的な導入の順番決定が必要である。次いで、in vitroの細胞培養系において、候補遺伝子を封入したエクソソームを用い、ベクターとしての有用性を評価する。さらに、これらエクソソームベクター投与が、正常核型を有する小動物にいかなる有害事象を生ぜしめるのかを把握する。
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