2016 Fiscal Year Research-status Report
水疱形成による瘢痕型脱毛症の新規モデル作製と病態解明
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16K10120
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中村 秀樹 北海道大学, 医学研究科, 助手 (60435956)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 宏 北海道大学, 医学研究科, 教授 (00146672)
西江 渉 北海道大学, 医学研究科, 准教授 (20443955)
夏賀 健 北海道大学, 大学病院, 講師 (70645457)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 皮膚病態学 / 瘢痕型脱毛症 / 17型コラーゲン |
Outline of Annual Research Achievements |
野生型マウス新生仔背部皮膚へ、シリンジを用いて陰圧をかけることで水疱形成を誘導した(suction blister)。その後の治癒過程を詳細に解析したところ、以下の結果が得られた。1) suction blister作成部は、基底板の直上で表皮と真皮が離開し、その際に毛包漏斗部以下の組織は真皮側に残っている。2) 水疱形成1日後から汎サイトケラチンの染色で認められる再上皮化が開始する。3)これにあわせて表皮基底細胞を支持し、幹細胞マーカーとして知られるインテグリンalpha6も水疱形成1日後から再上皮化した上皮層で発現がみられる。4)水疱形成2日後には再上皮化した上皮層の重層化がほぼ完了するが、ロリクリンに代表される分化マーカーの発現がまだみられない。5)水疱形成3日後には、ロリクリンの発現も完成し、完全に上皮化が終了する。6) その後さらに2週間程度の観察では、周囲の皮膚と比較してsuction blister作成部位の毛周期に変化は生じない。これに対して、表皮基底膜蛋白17型コラーゲン(COL17)のノックアウト(KO)マウス皮膚でのsuction blisterでは、以下の点が相違していた。1) suction blister作成部では、毛包下部に位置する毛乳頭も含めて真皮側から離れて表皮側へと移行する。2)水疱形成1日後には汎サイトケラチンやインテグリンalpha6の発現はみられず、再上皮化ははじまらない。3) 水疱形成2日後になって上記の再上皮化が開始される。4)水疱形成3日後では上皮化は完了しない。5)suction blister作成部位の毛周期は、周囲の皮膚と比較して数日程度ずつ遅延する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画予定の通り、野生型マウスとCOL17KOマウスの水疱形成部位について、幹細胞マーカーや分化マーカーの発現の比較を経時的に行い、それぞれの発現時期やパターンの詳細について研究実績の概要に記したとおりの内容を得ることができた。さらに、COL17KOマウスにおいて、suction blister作成部位で毛乳頭を含めて真皮側から喪失することで、再上皮化の遅延とともに毛周期の遅延も同時に見出すことができた。これらの結果は、研究計画書に記した内容を発展させる内容となっており、最終ゴールである瘢痕型脱毛の形成メカニズム解明へと着実に進んでいることを示すものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1)毛包形成に関連するシグナリングの動態の検討 休止期で維持されている毛包表皮幹細胞が増殖のphaseに入る際、Wntシグナリングの活性化は必須であり、逆にBMPシグナリングは抑制的に作用する。水疱形成後のWntシグナリングの活性を、構成因子であるβ-cateninやLEF1の局在によって評価する。同様に、WntシグナリングのレポーターマウスであるTOPGALマウスにも、陰圧による水疱を形成させてWntシグナリングの活性を可視化する。BMPシグナリングでは、毛包組織において活性化すると下流でSMAD1/5がリン酸化されて核内に移行する。水疱形成部位のpSMAD1/5の染色を行うことで、BMPシグナリングの動態を解析する。また、Wnt/BMPそれぞれのシグナリングのリガンドの遺伝子発現について、水疱形成部位と周囲の非水疱部位の転写産物を網羅的に解析し、比較する。 2)水疱形成から生じる炎症の毛周期への影響の検討 水疱形成部位周囲の炎症細胞の染色によって、浸潤している免疫細胞を同定する。また、ジフテリア毒素投与によってマクロファージが欠損するCD11cDTRマウス、B/T細胞機能不全のRag2-/-マウス、T細胞欠損-マウスの複数のトランスジェニックマウスにおいて陰圧による水疱を作成し、その後の毛周期を評価することで、これらの免疫細胞による瘢痕型脱毛の病態への関与を評価する。 3)ヒト瘢痕型脱毛症患者検体の解析 上記で得られた知見が、ヒト瘢痕型脱毛症患者検体で再現できるかを組織学的に検討する。特に、全身性/円板状エリテマトーデス患者や表皮水疱症患者検体を解析する。なお、当初の想定通りに水疱形成部位の長期的な脱毛が見られない場合には、水疱形成部位の毛包の再生過程の解析へと切り替えることを予定している。
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] Defective binding of plectin and collagen XVII leads to epidermolysis bullosa simplex.2016
Author(s)
Natsuga K, Nihsie W, Nishimura M, Shinkuma S, Watanabe M, Izumi K, Nakamura H, Hirako Y, Shimizu H
Organizer
The 46th Annual European Society for Dermatological Research meeting.
Place of Presentation
Technical University of Munich, Munich, Germany
Year and Date
2016-09-07 – 2016-09-10
Int'l Joint Research