2017 Fiscal Year Research-status Report
スピンラベル法による遺伝性角化異常症の角質の構造異常の解析
Project/Area Number |
16K10122
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
皆川 智子 弘前大学, 医学部附属病院, 助教 (20436033)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤村 大輔 弘前大学, 医学研究科, 教授 (60196334)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 魚鱗癬 / 電子スピン共鳴 / 遺伝性角化異常症 / 掌蹠角化症 / electron spin resonance / バリアー機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで我々のグループはスピンラベル法を角質の機能解析に用いて,炎症性角化症である乾癬患者において角質の構造異常を報告してきた.本研究では,遺伝性角化異常のモデルマウスの角質の構造異常をスピンラベル法で明らかにするとともに, 遺伝性角化異常症患者の電子スピン共鳴(ESR)のスペクトルを検討し,発症機構解明や新規治療法の開発に発展させることを目的とする. 我々が開発した角層スピンラベル法を用いて,個々の遺伝性角化異常症患者から得られる特有のスペクトルを解析するために,以下の実験を計画した.1)動物モデルでの検討:魚鱗癬や掌蹠角化症モデル動物を使用して,ESRのスペクトルを検討し,角質の水分量や経皮水分蒸発量(TEWL),組織学的・電顕的にも比較し,本法の有用性を証明する.2)魚鱗癬や掌蹠角化症患者での角層の検討:当科通院中の遺伝性角化異常症患者や当科で遺伝子検索を行った他施設での患者から皮膚サンプルを採取し,電子スピン共鳴のスペクトルを検討する.また,治療効果などの判定に応用可能か調べる. 3)魚鱗癬や掌蹠角化症患者の赤血球や白血球での検討:角化異常症の原因遺伝子でも, ケラチンやフィラグリンのように表皮に限局して発現するものもあれば, パピヨン・ルフェーブル症候群のカテプシンCのように, 全身の臓器に発現するものもある.遺伝性掌蹠角化症患者の赤血球や白血球を採取しESRのスペトルを検討する. 我々は患者と健常者の角質を試料とし,試薬の5-ドキシルステアリン酸(DSA)のスピンプローブ溶液をインキュベートして室温でESRイメージング測定を行った.測定装置は日本電子製RE-3X X-バンドESR装置を用いた.患者と健常者の角質から得られたスペクトルは波形がやや異なっており,今後角化症のESRのデータを蓄積し,侵襲の少ない診断法につながるよう症例を積み重ねている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度実施予定としていた遺伝性角化異常患者における皮膚・血液サンプルの比較検討については,弘前大学医学部附属病院皮膚科外来に通院中の葉状魚鱗癬,Superficial epidermolytic ichthyosisの患者の協力を得て皮膚サンプルを電子顕微鏡で観察し,ESRのスペクトルを計測することができた. 一方でマウスにおける角層の電子スピン共鳴の測定法の確立については,掌蹠角化症を有するKRT9遺伝子のノックアウトマウスや自然発生したspontaneous harlequin ichthyosis (ichq) mouse(シスタチンM/E遺伝子の欠損)の皮膚や爪甲からの角層採取に時間を要しており,次年度も継続して行う必要があるため.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き, 1)マウスにおける角層の電子スピン共鳴の測定法の確立, 2)マウスにおける角層水分量やTEWLとの比較,また組織学的・電顕的に皮膚を観察.3)掌蹠角化症,魚鱗癬のモデルマウスでも同様の検討を行う.さらに遺伝性角化異常患者で皮膚と血液サンプルでの検討を行うため,現在弘前大学医学部附属病院皮膚科外来に通院中の患者から同意書を示しつつ研究について説明を行い,同意が得られた場合に皮膚・血液サンプルを採取する.さらに他施設の患者で遺伝子解析を当科で行った患者ついて,担当医に連絡し皮膚・血液のサンプル供与をお願いする.協力いただける患者について臨床状態,角質水分量・TEWL,ESRのスペクトルを比較検討する. 尚,当科通院中のR348X/Y365Dが同定された(Kon et al. J Invest Dermatol. 120: 170-172, 2003)葉状魚鱗癬の患者さんより提供いただいた鱗屑を電顕で観察したところ,角質細胞に脂質滴がみられた.またESRでは葉状魚鱗癬の患者さんのスペクトルは二峰性で信号強度とスペクトルの波形が健常者と比べて異なっており,角層の細胞間脂質の質的な変化があるのではないかと推測された. 今後遺伝性角化異常患者の皮膚・血液サンプルでESRのスペクトルを計測し解析を積み重ね,症例ごとに臨床像と比較するとともに,疾患ごとに比較し,ESRの有用性を検討する.ESRのスペクトルを比較検討し,波形等から疾患特異性が認められれば,遺伝子検索では遺伝子変異が同定できなかった症例においても,ESRによるスペクトルが将来の診断に結び付く可能性がある.ESRは少量の皮膚や血液のサンプルで計測でき,侵襲性も少なく,引き続き患者さんにご協力いただき,計測し症例を積み重ねたい.
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Research Products
(7 results)