2016 Fiscal Year Research-status Report
脂肪組織由来幹細胞を用いた再生医療による難治性皮膚疾患の治療法開発
Project/Area Number |
16K10176
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
長谷川 敏男 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (20317019)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脂肪組織由来幹細胞 / 表皮角化細胞 / サイトケラチン / VII型コラーゲン |
Outline of Annual Research Achievements |
脂肪組織由来幹細胞は、その利用に倫理的な問題が少なく、細胞作成時に遺伝子操作が不要であることから安全性が高く、採取が比較的容易である。また、免疫抑制作用を有し抗原性が低いことも明らかになっている。このため、安全性の担保された第三者の脂肪組織が臨床応用出来れば、自家細胞だけでなく他家細胞を用いた再生医療が実現する可能性がある。そこで、遺伝子異常により先天的にVII型コラーゲンが減少または欠損することで表皮・真皮間に存在する係留線維に異常を来たし、全身の表皮が容易に剥けて難治な皮膚潰瘍を生じる劣性栄養障害型表皮水疱症の治療に、VII型コラーゲン遺伝子異常の無い他家由来の脂肪組織由来幹細胞を応用することを目指して、その実現可能性を検証する基礎的な研究をおこなっている。 われわれは、脂肪組織由来幹細胞を表皮基底膜構成成分であるIV型コラーゲン上にて真皮由来線維芽細胞と共培養し、all-transレチノイン酸とbone morphogenetic protein-4で刺激し、その後表皮角化細胞用培地で単独培養することで、約45%の脂肪組織由来幹細胞に、未分化な状態では殆ど発現していなかったcytokeratin 10が発現することを見出した。脂肪組織由来幹細胞は未分化な状態でもcytokeratin 5やcytokeratin 14などの表皮角化細胞マーカーを発現しており、表皮角化細胞への分化を定義することは難しいが、上記の処理を施した多くの脂肪組織由来幹細胞が表皮角化細胞に近づいたと言える。また、同処理を施した脂肪組織由来幹細胞の約80%がVII型コラーゲンを発現することも見出した。 これらの結果から、劣性栄養障害型表皮水疱症の治療に特定の処理を施した脂肪組織由来幹細胞を応用出来る可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脂肪組織由来幹細胞の、効率のよい表皮角化細胞への分化誘導とVII型コラーゲンの発現を実現することが出来た。本結果は予想以上の効率であったため、磁気細胞分離による細胞の選別など、それ以上の操作をすること無く本細胞を劣性栄養障害型表皮水疱症の治療に応用出来ると判断した。 色素細胞への分化誘導については実施不可能であったが、次年度に予定している劣性栄養障害型表皮水疱症モデルマウスを用いた治療実験の準備も順調に進捗したので、本研究は概ね順調に推移していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞レベルの実験から動物を用いた治療実験に移行する。劣性栄養障害型モデルマウスを繁殖し、4分の1の確立で出生するホモノックアウトマウスの背部皮膚を免疫抑制マウスに移植した後に、蛍光色素を導入して分化誘導した脂肪組織由来幹細胞を、静脈投与や局所注射など、細胞数を含めて様々な方法でマウスに投与する。マウスの生存日数の比較検討や、皮膚を含む各種臓器への移植細胞の生着を病理組織学的に解析する。 本研究では脂肪組織由来幹細胞の、劣性栄養障害型表皮水疱症と尋常性白斑の治療への応用を目指しているが、ここまで順調な結果を得られている劣性栄養障害型表皮水疱症に対する治療実験を優先しておこなう。
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