2016 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム解析による円形脱毛症疾患感受性遺伝子同定の試み(第3段)
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16K10177
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
池田 志斈 順天堂大学, 医学部, 教授 (40193198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡 晃 東海大学, 付置研究所, 講師 (80384866)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 円形脱毛症 / ゲノム解析 / 多型DNAマーカー / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在まで我々は、148名の円形脱毛症患者群と580名のコントロール群を比較しつつ、マイクロサテライトマーカーを用いてゲノムワイドな相関解析を行い、HLA領域の4.9MBの範囲に疾患感受性遺伝子の局在を同定した(OR:3.74)。その他のゲノム部位においてもいくつか相関を同定し得たが、HLA領域程の強い相関は検出されなかった。続いて、多数の遺伝子やDNAマーカーについて解析し、28のハプロタイプを同定し、その内の1つのハプロタイプに疾患感受性遺伝子とその遺伝子多型または変異が乗っていることが判明した。そこでリスクハプロタイプ5つと非リスクハプロタイプ7つにつき同領域4.9MBの次世代シークエンサーによる解析を行ったところ、リスクハプロタイプのみに共通したある遺伝子のコーディング領域のsingle nucleotide variant (SNV)が同定された。In silico解析では、このSNVにより当該遺伝子の種を越えて保存されているロッド構造に著しい障害を与えることが推定された。そこでこのSNVをマウスカウンターパートの遺伝子にゲノム編集(CRISPR-Cas9 )技術を用いて挿入したところ、円形脱毛症の症状がマウスに再現された。この病変をデルモスコープで観察すると、ヒトの円形脱毛症病変と同様に折れ毛、感嘆符毛、black dot、などがみられ、また病理学的検討でもヒト円形脱毛症病変と同様の所見が得られた(現在論文投稿中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ゲノム相関解析で疾患感受性遺伝子と思われるSNVを同定しても、それが真の変異か否か証明することは困難に近い場合が多い。実際我々は、当該遺伝子のノックアウトマウスを作成しその表現型を観察したが、発育や毛サイクルなどに関して、通常の飼育環境ではなにも問題なく、また円形脱毛症の症状も今のところ見られていない。しかし前述の如く、このSNVをマウスカウンターパートの遺伝子にゲノム編集(CRISPR-Cas9 )技術を用いて挿入したところ円形脱毛症の症状がマウスに再現されたことにより、本遺伝子が円形脱毛症の疾患感受性遺伝子であることが証明し得た。
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Strategy for Future Research Activity |
本円形脱毛症モデルマウスにおける遺伝子発現につき、網羅的解析法、PT-PCR、免疫染色などを用いて解析する。また可能であれば、本遺伝子変異を持つ患者皮膚サンプルについても、遺伝子発現プロフィールがマウスと同様であるか、検討したい。更に当該遺伝子の発現コントロール様式について、発現ベクター系を用いて解析する。これらの研究により、本遺伝子変異を持つ患者の治療法開発のシードが得られるものと思われる。
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Causes of Carryover |
共同研究者の岡 晃の未使用により残金が生じたもの。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に消耗品購入費として使用する。
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