2016 Fiscal Year Research-status Report
経皮的冠動脈形成術および冠動脈バイパス術の冠血流予備能に対する効果の検討
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16K10264
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
納谷 昌直 北海道大学, 大学病院, 講師 (20455637)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | PET |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の研究の目的は、最新の心臓PET/CT装置を用いて冠血流予備能を測定するための撮影プロトコールおよび解析プログラムを開発することである。24名の冠動脈疾患患者と年齢があった8例の健常ボランティアを対象とした。PET/CT装置にて、500MBqの15-酸素標識水を投与し、安静時とATP負荷時の心筋血流量を測定した。その比から冠血流予備能を算出した。結果は、対象者全員で冠血流予備能を測定することが可能であった。健常者にて冠動脈領域毎に局所冠血流予備能を測定したところ、安静時でのばらつきが少なく、正確に測定できていると考えられた(左前下行枝: 0.82 ± 0.15 ml/min/g、左回旋枝: 0.83 ± 0.17 ml/min/g、右冠動脈: 0.71 ± 0.20 ml/min/g、p = 0.74)。ATP負荷時でも同様であった(左前下行枝: 3.77 ± 1.00 ml/min/g、左回旋枝: 3.56 ± 1.01 ml/min/g、右冠動脈: 3.27 ± 1.04 ml/min/g, p = 0.62)。結果として、冠血流予備能も正確に算出された(左前下行枝: 4.64 ± 0.90、左回旋枝: 4.30 ± 0.64、右冠動脈: 4.64 ± 0.96, p = 0.66)。患者と比較したところ、患者の冠血流予備能は、健常ボランティアと比較して有意に低下したことから(2.75 ± 0.81 vs. 4.54 ± 0.66, p = 0.0002)、冠血流予備能を用いることによって、冠動脈疾患患者を検出することができることが示された。さらに患者での局所解析にて、50%以上の狭窄病変のある領域では狭窄のない領域に比べて冠血流予備能が低下する傾向があった(2.43 ± 0.81 vs. 2.95 ± 0.92, p = 0.052)。現在、欧米雑誌に論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
以下の平成28年度の予定は完了し、平成29年度の予定も進行している。 臨床研究の申請および画像解析プログラムの改良(平成28年度)について: 院内の自主臨床試験への研究プロトコールを申請し、承認を得た。最初に、画像解析プログラムの精度を高め、患者でも正確に冠血流予備能が測定できることを目的とした。24名の冠動脈疾患患者と年齢があった8例の健常ボランティアを対象とした。PET/CT装置にて、500MBqの15-酸素標識水を投与し、安静時とATP負荷時の心筋血流量を測定した。その比から冠血流予備能を算出した。結果は、対象者全員で冠血流予備能を測定することが可能であった。年齢の冠血流予備能は健常ボランティアと比較して優位に低下し(2.75±0.81 vs. 4.54±0.66, p=0.0002)、有病患者の検出に有用であることがわかった。現在、欧米雑誌に論文投稿中である。 データベースへの患者登録 (平成29年度以降予定分)について: 90例の冠動脈疾患を対象とした前向き観察コホート(経皮的冠動脈形成術および冠動脈バイパス術の冠血流予備能に対する効果の検討)のための患者登録データベースを作成した。北海道大学病院および関連施設の循環器内科にて同意が得られた冠動脈疾患の疑いあるいは既往のある患者の登録を開始し、76例の症例が集まった。これらの患者では初回のPET/CT検査が行われ、治療前の冠血流予備能の測定ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究目的に従い、下記の検討を行う予定である。 1.生活習慣病是正の冠血流予備能に対する効果の検討 生活習慣病により、冠微小血管での負荷時血管拡張機能が障害され、結果として、冠血流予備能が低下することが知られている。今回の研究では、生活習慣病を有する患者において、至適内服治療の冠血流予備能に対する効果の程度を確認する。冠血流予備能の改善が確認でき、その程度を定量的に評価することができれば、冠動脈疾患患者の個別化診療の実現に貢献すると考えられる。 2.冠血行再建術(経皮的冠動脈形成術あるいは冠動脈バイパス術)の冠血流予備能に対する効果の検討 冠動脈狭窄が70%より高度になると、心筋虚血が生じ、冠血流予備能も低下する。冠血管再建術は心筋虚血を改善することから冠血流予備能も改善することが予測されるが、詳細は明らかではない。従って、本研究において冠血行再建術の効果を冠血流予備能に注目し、検討する。さらには、冠血流予備能改善に寄与した因子を臨床所見、内服薬および血行再建術から検証し、効果的な血行再建術と内服治療の組み合わせを解明できると期待される。
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Causes of Carryover |
納品が遅れたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に消耗品費として使用する。
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