2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K10383
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
奥村 敏之 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (50241815)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
照沼 利之 筑波大学, 医学医療系, 助手 (40361349)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 陽子線治療 / 部分肝照射 / 線量分布 / 体積変化 / 代償性肥大 / 非剛体画像レジストレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究では当初肝や肺の区域を血管構築から同定し,治療計画上の線量分布と治療後の区域の体積変化を比較検討することで,機能温存を効果的に得るための照射技術を開発することであった。経時的に撮影した造影CTから血管構築を抜き出し,肝区域毎の体積を定量し,その経時変化を見ることで区域毎の体積変化に差異があるかどうかを確認する予定であったが,現状のソフトウェアでは描出能、定量性に問題があると判断されたため,より確実性のある方法として照射によってCT上の吸収値が低下してくる領域と,残りの肝組織の体積変化をまず調べることとした.Deformable image registration機能を有するMIM maestroソフトウェアを用いて,陽子線線量分布情報を加味して,線量と肝臓の体積の変化を照射後2年まで経時的に追跡し,照射前の肝予備能と代償性肥大の関連性を定量的に評価できるか否かを検討した.照射前の肝予備能をALBI score (log10 bilirubin (μmol/L)×0.66) + (Albumin (g/L)×-0.085)で評価したところ,肝予備能良好群では代償性肥大が観察された.今後は代償性肥大が非癌部肝臓のどの部分に起こりやすいのかを探りたい.その意図は,例えば肝右葉の癌病巣を治療した場合に,肝予備能が良好であれば肝は代償性肥大をきたす.その際右葉の非癌部の肥大と左葉の肥大に差があるのかどうかを症例毎に確認し,照射野と脈管系の位置関係によって肥大する率が影響を受けるか否かを明らかにしたい.更には,より効率的に代償肥大を誘発するために照射を控えるべき部位が特定できるかどうかを探りたい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の方向性として,肝臓の門脈の形を基準に肝区域毎の体積変化を経時的に追跡し,陽子線線量分布図との対比を行うことで,照射野内外の体積変化が照射部位によって異なった経過をたどるのかを解析する予定であった.しかし,照射野近傍の門脈は照射後に径が細くなり,次第に同定困難となり,経時的に再現性をもって体積変化を求めるのが難しかった. そこで,前述のように治療計画支援装置MIM maestroを用いて陽子線線量分布と体積変化の関係を求めることができるかどうかを検証し,ある程度定量評価ができそうである感触を得た.結果は2017年の放射線腫瘍学会にて発表し,現在英文誌に投稿中である.ここでは,照射開始時の肝予備能に応じてその後の代償性肥大の起こり方に差があることは示せたが,照射部位に応じての変化までは解析が進まなかった. 更に症例数を増やすことで,ある程度肝予備能の揃った群において解析をしたいと考えている.照射部位とその後の体積変化を解析することで,照射を回避したほうが良い領域を特定できればよいと考えている.具体的には求肝性および遠肝性血流の重要部位である門脈1次分枝部と肝静脈・下大静脈接合部が照射野に含まれるかどうかで代償性肥大の程度が変わることが示せるのではないかと予想している.
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Strategy for Future Research Activity |
前述の解析にて,照射後の非癌部肝臓体積の代償肥大が認められた群の,照射前の肝予備能はALBI scoreにおいて-2.9±0.3であった.ALBI scoreは-2.60以下がGrade 1, -2.6から-1.39がGrade 2, -1.39より高ければGrade 3と分類され,Grade 1が最も肝機能の良いグループである.よって,Grade 1の症例を対象に,体積変化を追跡し,照射部位と体積変化度の関係を解析してゆきたい.照射後の臓器の体積変化は緩徐な変化であり,前述の解析では照射後2年後まで追跡できた症例を対象とした.1年後には照射前より減少した非癌部体積が2年後に回復してきた症例も観察されたため,できれば2年の観察期間を確保できる症例で解析したいと考えているが,途中で肝内再発が生じる例も少なくなく,研究期間中に十分な症例集積ができない可能性もあるが,継続してデータを蓄積してゆきたいと考えている.
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Causes of Carryover |
本年度は現有のソフトウェアを用い,医学物理スタッフの協力を得て,少人数での解析を行ったため大きな支出がなく,残金を繰り越しとした.この研究でもっとも時間を費やすのは,CT上で臓器の輪郭や照射によって変形をきたす領域の輪郭を1例毎に書き揃えることである.血管構築をもとにした輪郭描画は医師でないと実施が難しいと考えられたが,CTの吸収値に基づいた変化をよりどころに輪郭を描く作業は医師でなくても可能と考えられる.この部分を学生アルバイトに実施してもらうことで,効率を上げたい.
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Research Products
(1 results)