2016 Fiscal Year Research-status Report
肝移植グラフト肝におけるHLA発現の移植免疫応答における意義の解明
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16K10424
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉澤 淳 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (60457984)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | HLA / 抗ドナー抗体 / 肝移植 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝移植後に出現する抗ドナー特異的HLA抗体(DSA)は、主にHLA class IIに反応する抗体であり、移植肝線維化と関連することを報告した。HLA class IIは主に抗原提示細胞やB細胞に発現しており、DSAが移植肝に作用する機序は不明である。今回、移植肝組織におけるHLA class II発現の有無・分布を調べ、DSAと移植肝線維化との関係を検討した。 本年度の研究において、Retrospective studyとして移植肝生検組織におけるHLA-DRの発現の染色およびDSAの測定を行った。対象症例を胆道閉鎖症移植後の患者で、明らかな脈管合併症などの線維化をきたす病態を除外して選定した。移植肝におけるHLAの発現の評価方法について検討を行い、門脈域、肝静脈域にわけ、発現の広がりと強度によってscore化する方法を確立し、HLA発現の定量化を行った。合わせて、肝線維化についても門脈域、肝静脈域、類洞内の線維化を評価しなおし、肝線維化のscore化を行った。HLAの発現と肝線維化の相関およびDSAの有無の関係について検討を行った。 DSAの陽性率は52%であった。DSA陽性症例においてHLA-DRの発現と肝線維化に相関を認めた。一方、DSA陰性症例においてはHLA-DRの発現と肝線維化に相関を認めなかった。このことから、肝組織HLA-DR発現に加え、血中DSAが存在することが、移植肝線維化進行の背景となると考えられた。 また、HLA発現と血中ALT値の上昇に有意な相関を認めた。このことから肝障害と移植肝組織HLA-DR発現に相関があることが推察された。肝障害により移植肝におけるHLA-DRの発現が亢進し、さらに、HLA-DRの発現がDSAを誘発して抗体関連型拒絶反応を惹起するという仮説を裏付けると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
DSAのサブクラス解析と補体反応性の評価を行う予定であったが、試薬のtiterationを行うために予備実験を繰り返しているが、そのため、少し進行が遅れている。また、HLA-DRの発現の定量化について症例を重ねてから定量方法の確立を行っていたため時間がかかっている。しかし、順調に研究は進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究を引き続き継続し、肝線維化とHLA発現のメカニズムの分子学的機構の解析を行う。そのためにHLA-DRとCD31などの血管新生のマーカーの2重免疫染色を行う。 また、平成 28 年度に行った retrospective な研究を踏まえ、prospective な研究を行う。第 1 に肝移植 時(血流再開後 3 時間後、移植手術終了前)に肝組織の採取を行い、抗原の発現性を評価する。 冷阻血時間の影響、Small-for-size グラフトなどによる相対的門脈血流過剰状態の影響、ドナー の年齢など移植時の虚血再灌流障害によるグラフト障害の程度と抗原の発現を検討する。この発現性の違いが後の、急性拒絶反応の発生頻度や DSA 産生の頻度への影響があると推測した。この仮説の実証のための解析を行う。
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Causes of Carryover |
抗HLA抗体のサブクラス解析を行う予定であったが、試薬調整に時間がかかり、検査に入れなかったため、その費用が今年度使用できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画通りに抗HLA抗体のサブクラス解析に今年度の予算の残余額を使用する予定である。また、そのほかは研究計画通りに使用する予定である。
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Research Products
(2 results)