2016 Fiscal Year Research-status Report
乳癌診療情報と基礎解析の統合データベースを用いた診療支援ツール開発に関する研究
Project/Area Number |
16K10455
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高田 正泰 京都大学, 医学研究科, 助教 (50452363)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 昌弘 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 特任准教授 (30458963)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | データベース / バイオバンク / 予後予測 / 治療効果予測 / バイオインフォマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
Webを介しデータ収集可能な診療データベースの開発を行った。京都大学医学部附属病院および関連各施設にクライアントソフトを導入し、連結可能匿名化された診療データをサーバーにアップロードする方式とした。これにより、予後情報などのアップデートが迅速かつ容易になる。現在、ベータ版の作成が完了し、京都大学医学部附属病院において試験運用を開始予定である。 現在まで、診療データと紐付された血液・組織サンプルを約2400症例分収集済みであり、これらを利用したタンパク発現解析、遺伝子発現解析等が行われてきた。本年度は、解析結果と臨床情報を統合する作業を進めた。統合データベースは、京都大学医学部附属病院内のサーバーにて管理している。 HER2陽性原発性乳癌の術前化学療法による治療効果および予後を予測するツールを開発した。開発には776例のコホートデータを用いた。術前化学療法による病理学的完全奏効の予測能はAUC 0.643、術前化学療法後の再発・死亡イベントの発生予測能はAUC 0.833、脳転移の発生予測能はAUC 0.927と、高精度の予測が可能であった。今後、本予測ツールをWebデータベースに実装し、前向きに評価する予定である。 患者由来ゼノグラフト(PDX:patient derived xenograft)2系統において、患者の乳癌組織とこれに由来するゼノグラフトの腫瘍組織の遺伝子変異及び蛋白発現のプロファイルが類似していることを確認し、このうち1系統では患者の乳癌組織と類似した薬剤感受性を示すことも確認した。また、健常者由来の免疫細胞を有したヒト化マウスモデルを樹立し、マウス体内でもヒト由来免疫細胞の活性が保たれることを確認した。今後はこの手法を用いて同一患者由来の乳癌細胞と免疫細胞を有するヒト化PDXモデルを作成し、生体内での乳癌細胞と免疫細胞の相互作用を症例ごとに検証する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
京都大学医学部附属病院およびその関連施設から診療情報を効率的に収集するためのWebシステムの開発は本年度で概ね完了している。今後は試験運用を経て実際の運用を開始する。バイオバンクのサンプル収集も順調に進んでおり、遺伝子・タンパク発現解析等が進められている。診療情報データとバイオバンクサンプルを用いた解析データとの統合作業を進めてきたが、こちらについては今後も継続する必要がある。HER2陽性乳癌の治療効果および予後予測を目的とした診療支援ツールの開発を行った。今後は、Webシステムを利用した前向き評価を行う予定である。PDXモデルの樹立も完了し、薬剤感受性などの検討に向けた準備ができたと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
Webデータベースの運用を開始し、診療情報の収集を進める。バイオバンクから得られる遺伝子・タンパク発現情報と診療情報との統合作業を継続する。統合データベースについては、京都大学学部附属病院内のサーバーで厳重に管理するが、個人情報保護法、および人を対象とする医学系研究に関する倫理指針の改正内容に留意する。 本年度開発した予測ツールをWebデータベースに実装し、今後Webデータベースに登録されてくる診療情報を用いて前向きに精度評価を行う。データベースに蓄積される診療情報を用いて予測ツールのアップデートを自動化するプログラムの開発を進める。 PDXモデルを用いた薬剤感受性試験から得られる解析結果を統合データベースに反映し、これを用いた治療効果予測ツールの開発を進める。
|
Causes of Carryover |
学会出張旅費として次年度に使用する予定のため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
旅費として使用予定である。
|