2017 Fiscal Year Research-status Report
消化器癌に特異的な糖鎖暗号(sugar code)の解読
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16K10563
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
橋本 真治 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (60624666)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 竜也 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20282353)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 消化器癌 / レクチン / 糖鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞の癌化に伴う糖鎖修飾の変化は、主に4つに分類されることが報告されている。すなわちシアル化、フコシル化、N型糖鎖の分岐形態の変化、そしてO型糖鎖の短縮、未熟化である。これまでの腫瘍マーカーはこれらの変化をとらえているものが多かったが、癌腫ごとの特異的な糖鎖は依然としてあきらかとなっていない。我々は初年度に作成した各種消化器癌(食道、胃、大腸、肝臓、胆道、膵臓)と乳がん、肺がんを含む手術検体を利用した組織アレイを作成しており、標識レクチンによるレクチン染色により癌特異的な糖鎖構造の同定をおこなった。レクチンは同じ糖鎖構造を認識するものでも、その親和性や結合力はそれぞれことなっており、本年度はレクチンを認識する糖鎖種類ごとに分類し、主にフコースを認識するレクチン群、シアル酸を認識するレクチン群、O型糖鎖の未熟性を認識するレクチン群に分けて染色を行い、それぞれ非癌部と癌部での染色強度を比較し、癌細胞特異的に反応するレクチンの同定を試みた。その結果、シアル化を認識するレクチンXが腫瘍の間質に特に強い反応性を示し、フコースを認識するレクチンYが正常では反応性が見られないものが多かったが、癌部では高い反応性を示すなどのいくつかの認識レクチンを同定することができた。レクチン染色により得られた情報は、癌部非癌部の染色性のみではなく、腫瘍内での糖鎖修飾、翻訳語修飾の不均一性の理解にも有用であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に作成した消化器癌とその正常組織を並べた組織アレイを用いて、認識する糖鎖毎に分類したレクチンを用いて、闇雲な網羅的な染色ではなく、糖鎖の変化を推測しながら体系的なレクチン染色を行った。その結果、フコースを認識するレクチンYでは正常大腸上皮(陽性3症例/全24症例)に対し、大腸がん細胞(陽性21症例/全24症例)であり、大腸がん細胞に高い反応性を示すことが確認され、本レクチンが認識するフコースを含む糖鎖構造が大腸における癌化の新たなマーカーとなることが示唆された。同様にシアル化を含む糖鎖を認識するレクチンYでは癌間質に高い反応性を示すことが確認された。これらの知見は、レクチンが癌由来の糖鎖や癌細胞で修飾されたタンパクなどの新たな検出マーカーとなる可能性が考えられ、これらの癌(または癌間質)-レクチンの組み合わせを追加で発見し、今後分子標的治療や診断薬への応用を検討していく断簡である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で得られた癌組織-レクチンの組み合わせは、癌種ごとの特異的な糖鎖発現の理解が可能となり、糖鎖をターゲットとした分子標的治療や、新規診断法の確立が可能となると考えられる。本研究の出口としては、第一に消化器癌を中心に早期診断マーカーとしての有効性を探り、得られた癌特異的なレクチンを用いて、患者由来血清などのサンプル中の糖鎖の認識を目指す。さらにレクチンを用いた癌特異的糖鎖標的治療への応用としては、安全に生体にできるように他の研究機関と協力しながらレクチンの改変を目指す。
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Causes of Carryover |
本研究での消耗品の中心はレクチン染色に関する薬剤や、染色関連の物品費である。今後も症例数を増やして検討予定であり、次年度も継続して使用額が生じた。 使用計画 次年度に追加で必要な大型物品の購入予定はない。本研究を遂行するにあたり必要な1)物品、消耗品に関する費用、2)手術検体から組織アレイを作成する費用、とする。
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